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UPDATE|2021/07/29

アイドルからレスラーへ…中野たむ&上谷沙弥が語る「美しさではない、プロレスの凄み」

中野たむ 写真提供/スターダム



そもそもアイドル活動だけをやるつもりでいた上谷だったが、その体躯と運動能力は誰がどう見てもプロレス向き。それまでまったくプロレスに興味がなかった、という上谷だが、いつしかリングで頭角を現し、日本武道館では「ビッグダディの娘」林下詩美が所持する団体最高峰のベルト、ワールド・オブ・スターダム選手権にチャレンジするまでになった。そんな彼女の姿を中野たむは複雑な心境で眺めていた。

「すごく特別な存在なんですよ、上谷は。プロレスの世界に引き入れてしまった責任というものも私は感じているし、プロレスラーとしてスターになってほしい、とも心から思っています。ただ、私の目からはまだ『本当のプロレスラー』になれていないんじゃないか、と映る部分があるんですよね。たとえば日本武道館での試合。上谷はすごくビクついていたんですよ。あっ、いろいろ怖いんだろうな、と。大観衆に注目されることが怖い。ひょっとしたら自分が勝ってしまってベルトを巻くことすら怖がっているのかもしれない。対戦相手じゃなくて、まず自分に負けちゃっているんじゃないかなって」

上谷は金メダル級の飛び技「フェニックス・スプラッシュ」を武器にトップ戦線に食いこみ、春の女王決定戦「シンデレラトーナメント」で見事、初優勝(ご褒美として華麗なドレスを着て、リング上で披露できるというのも女子プロレスならでは、だ)。その実績を引っ提げて、アイドル時代の恩師である中野たむへの挑戦をぶち上げた。

日本武道館での髪切りマッチに勝利して手に入れた白いベルト(ワンダー・オブ・スターダム選手権)はいまだ中野たむの腰に巻かれている。その王座を奪取することでアイドル時代には「雲の上の存在」だった恩師を超えてみせる、と上谷は誓ったのだ。

「プロレスラーになっても、たむさんは私にとって『超人』でした。実力、キャリア、経験値……どれをとっても敵わない。場数が違いすぎました。でも、2年弱ですけど、私もキャリアを重ねてきたし、トーナメントに優勝したりして経験値も積んできた。早急にたむさんに追いつきたいし、ここで止まっているわけにはいかない」

そう上谷は語るが、かつての恩師の目は厳しかった。

AUTHOR

小島 和宏


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