──そうなると、ひとりでいる時間も多かったんじゃないですか?
街裏 ひとり遊びを覚えましたね。大きいお好み焼きを作って、中に入ったり。
──お好み焼きの中に?
街裏 引き戸を開けて入りました。居間があって、ダイニングがあって、床はフワフワして足触りがいいように設計して。完全にDIYでした。
──最初に憧れた芸人というと、どなたになるのでしょうか?
街裏 入り口はEE JUMPでした。僕は音を線で聴くクセがあるんですけど、EE JUMPはエンタツ・アチャコと同じ周波数なんですよ。僕はまだ中学生だったんですけど、EE JUMPのことを「あのご両人は」と話してましたから。
──無意識に。
街裏 はい。大正時代の方だと思い込んでいたんでしょうね。それほど凄みがありました。初めて聴いた時は、拳を握り倒して、額からは生ぬるーいオレンジ色の汗が流れたことを覚えてます。EE JUMPから大きく離されますが、2番目の憧れがダウンタウン。少し離れてダウソタウソです。
──それだけ周波数を重視しているんですね。
街裏 両親からの愛を受けてないと感じて、その分、あらゆる周波をキャッチしようとしたんでしょうね。
──街裏さんご自身も周波を出す側になろうと。
街裏 言葉を使って人を笑わせることって簡単なんですよ。その先に、「どんな周波を出すか」という課題があるわけで。どんどん周波を研ぎ澄ませていく作業に取り組みました。
──どういった作業をされたんですか?
街裏 街の電信柱であるとか、郵便ポストであるとか、みなさんが口に入れないようなものを舐めていきました。今でも街の一番汚い部分を探すことを日々怠らないようにしてます。
──そうするだけでだいぶ周波数が違ってくる。
街裏 今ふうの言葉でいうと、differentですね。
──街裏ぴんくという芸名の由来を教えてください。
街裏 あるホームパーティーに参加したところ、そこにキアヌ・リーブスがいて。僕と目が合った瞬間、キアヌが放った言葉が「マチウラピンク」と聞こえたんです。「これや!」と思ってキアヌと熱い握手を交わしましたね。
──語感がよかったので芸名にしようと。
街裏 ただ、後から差別的な言葉だと知って、信じたくない気持ちになりました。キアヌは最悪な奴ですよ。廊下ですれ違っても無視されますから。
──あれだけ固い握手を交わしたのに。
街裏 イオンモールの営業とか、キアヌにめっちゃあげているんですよ。感謝せいっちゅうの。
──イオンでキアヌ・リーブスを見たら、街裏さんの斡旋だと思ったほうがいい。
街裏 そう思ってくれていいと思います。アイツは儲けているんだから、ちょっとええもん奢ってくれてもいいのに。黒クレープばっかりですわ。