総合格闘家・所英男が大みそかにRIZIN.40（さいたまスーパーアリーナ）で元UFCトップファイターのジョン・ドッドソン（米国）と対戦する。「闘うフリーター」と呼ばれたイケメン青年も、気づけばすでに45歳の大ベテラン。現在は武蔵小杉に自身のジム「所プラス」もオープン。既にフリーターではなくなった。現役で選手を続ける以上、過酷な減量や追い込み練習は避けられないうえ、試合で日常生活に支障をきたすような大ケガを負う可能性もある。所がいまだに自分を追い込む理由は何なのか？ 「闘うフリーター」がいまもまだ闘い続ける理由とは──。
【写真】ときおり涙を流しながら想いを語る所英男【7点】──非常に厳しい対戦相手です。よくオファーを受けましたね。所 自分でもよく受けたなって思います。お話をいただいたときは、笹原（圭一／RIZIN広報事業部長）さんから連絡がありまして。いきなり「フライ級に落とせますか？』って聞かれたんですね。それで僕も「いや、すいません。落とせないっすね』とか答えたのかな。それがたしか11月の2週目くらいだったと思います。
──一度は断ったということですか？所 というか、笹原さんってよく冗談を言う人なんです。だから、どこまで本気かわからなかったんですよね。でも、それからよくよく話を聞いたら相手はUFCに上がっていた強豪だと。今、対戦相手を探しているけど難航していると。ちょうど金原（正徳／元SRCフェザー級王者・UFCにも参戦）さんと食事に行く約束をしていて、ちょうどその時に連絡をやり取りしていたので、金原さんに「こんな話が来ているんですよね」って笑いながら話したら、「やった方がいいですよ」と声のトーンが変わりまして。もうそこからは飲み会どころじゃないですよ。お酒じゃなくてお湯を飲んでいましたから。
──最終的に出陣を決めたのは所選手自身ですよね。所 そうです。いつも試合のオファーがあったときは勝村（周一朗／元修斗王者、プロレスラー）さんや野木（丈司／トレーナー、元プロボクサー）さんに相談して、受けるかどうかを決めるんですよ。でも今回は自分でやると決めて、「受けました」と2人には事後報告しました。僕にしては珍しいパターンかもしれない。それくらいこの一戦に賭けるモチベーションは高いということです。
かつて所は世界最高峰の格闘技団体・UFCを目指して闘っていた時期がある。2015年にはアメリカの総合格闘技団体・ベラトールの大会でL.C.デイビスと対戦。1-2のスプリット判定で惜しくも敗れたものの、持ち前の回転体を駆使したファイトで観客を魅了した。しかし、所の全米挑戦はこの一戦であっけなく終息。これには“今だから明かせる裏事情”があったという。
──L.C.デイビス戦はベラトールの年間ベストバウトに選ばれるなど、関係者からの評価も高かったです。振り返ってみて、いかがですか？所 キャリアの中でも一瞬の出来事だったんですけど、アメリカで試合するというのは自分にとってすごく重要な意味がありまして。あのときはベラトールで試合をして、負けたからリリースされたという話では実はないんです。マネージャーと揉めて試合に出られなくなったというのが実際のところなんですよ。
──そんなことがあったんですか。所 なので、本当に志半ばなんです。悔しい思いがあるからこそ、ベラトールやUFCの選手と組まれる日本人選手のことは「いいな～」と思いながら指を咥えて見ていました（笑）。でも、だからといって僕はRIZINで何の実績もないから偉そうなことは言えないですしね。自分が闘うのは無理だろうと思っていました。
──なるほど。そういう気持ちを抱えた中での、ジョン・ドッドソン戦オファーだったわけですね。所 自分が目指していたときにUFCでバリバリ活躍していた選手だから、もうやるしかないという気持ちでした。こんなすごいアメリカの選手と闘うチャンスなんてないだろうと考えていましたから。
