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UPDATE|2023/05/30

本屋大賞作家・凪良ゆうが紡ぐ美しい物語…『劇場版 美しい彼~eternal~』大ヒットの要因を探る

(C)2023 劇場版「美しい彼〜eternal〜」製作委員会



そして現在、ヒットしているのが『劇場版 美しい彼~eternal~』。同作は2021年に地上波で放送されたドラマ『美しい彼』(MBS ほか)、2023年に放送したシーズン2の続編で、映画化は今回が初めてのことだ。

原作は『汝、星のごとく』(講談社)で2023年の本屋大賞を受賞した凪良ゆうの小説『美しい彼』(徳間書店)。シリーズ累計発行部数は70万部を突破している。

元々凪良はBL小説レーベル出身だったが、2017年発売の『神さまのビオトープ』(講談社)から一般文芸も手掛けるように。映画化も話題になった『流浪の月』(東京創元社)は第17回本屋大賞を受賞するなど、今やBL小説・一般小説関係なく活躍している。

そんな凪良が紡ぎ出す作品の特徴は、なんといっても巧みな心理描写だろう。その特徴が如実に表れているのが、彼女の執筆するBL小説なのだ。2019年に掲載された朝日新聞のインタビューでも「関係性をクローズアップしないとBLにならない。心の動き、絡み合いには力を入れてきた」と語っており、彼女のBLには主役ふたりの心の動きが繊細に紡がれている。

加えて凪良の作品に共通しているのは「世間と相容れない人たち」をテーマにしている点。BL小説や一般文芸で主役の描き方に差はなく、「互いのことを分かりあえずとも認め合っていく」という向き合い方を一貫して表現してきた。

例えば2015年発売の小説『ニアリーイコール』(新書館)は、人を愛することに臆病な主人公と、彼の優しい元同僚との日常生活を描いた物語。臆病な主人公が元同僚と出会ってからまた人を愛せるようになるまでの心理描写と、彼らの関係性の変化が見どころとなっている。

『劇場版 美しい彼~eternal~』が好評を博しているのも、凪良の魅力である心理描写が俳優の演技や映像、音楽を通して見事に表現されたためだろう。作中では萩原利久、八木勇征演じるメインキャラのふたりが、すれ違いや葛藤を抱えながらも距離を縮めていく心理描写がおよそ100分にわたって描かれている。

それらの繊細な心理描写が観客の共感や感情移入を呼び、自ずと彼らを応援したくなるのかもしれない。つまり凪良ゆうが紡ぐ繊細な心理描写と美しいストーリーが観客に受け入れられ、ヒットに繋がったのだと考えられる。

映画のレビューサイトなどでも軒並み高評価をマークしている『劇場版 美しい彼~eternal~』。同作の評価をきっかけに、再び凪良のBL作品が映像化されることを期待したいところだ。

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