FOLLOW US

UPDATE|2023/05/19

【何観る週末シネマ】白人至上主義者たちの平和的な会合だったはずが…『ソフト/クワイエット』

(C)2022 BLUMHOUSE PRODUCTIONS, LLC. All Rights Reserved.

この週末、何を観よう……。今週公開の作品の中から、映画ライターのバフィー吉川が推したい1本をピックアップ。おすすめポイントともにご紹介します。今回ご紹介するのは、5月19日(金)より公開される『ソフト/クワイエット』。気になった方はぜひ劇場へ。

【写真】他者への潜在的な攻撃性が浮き彫りに…映画『ソフト/クワイエット』【12点】

〇ストーリー
とある郊外の幼稚園に勤める教師エミリーが、「アーリア人団結をめざす娘たち」という白人至上主義のグループを結成する。教会の談話室で行われた第1回の会合に集まったのは、主催者のエミリーを含む6人の女性。多文化主義や多様性が重んじられる現代の風潮に反感を抱き、有色人種や移民を毛嫌いする6人は、日頃の不満や過激な思想を共有して大いに盛り上がる。やがて彼女たちはエミリーの自宅で二次会を行うことにするが、途中立ち寄った食料品店でアジア系の姉妹との激しい口論が勃発。腹の虫が治まらないエミリーらは、悪戯半分で姉妹の家を荒らすことを計画する。しかし、それは取り返しのつかない理不尽でおぞましい犯罪の始まりだった……。

〇おすすめポイント
ある白人至上主義グループの会合から始まる今作。

「KKK」のように有色人種に対して暴力をもって痛めつけるというようなものではなく、多様性が進む現代社会において、白人が逆差別を受ける時代になってしまったと主張するメンバーたち。多様性というのであれば、そういう考え方もひとつの考え方として受け入れる必要もあるのかもしれない、と一部納得できる部分もあったりする。

彼女たちも普通の人間であり、日ごろから攻撃性を表しているわけではない。白人至上主義者といわれる人々の胸の内を知れたようで、今後、対話によって平和的な解決方法が見出していけるかもしれないというかすかな希望さえも感じられる。

しかし、ある出来事をきっかけに、平和的と主張していたはずの白人至上主義者たちがヘイトクライムに向かっていく。

そんな流れが、人間の人格や心の根底に隠されている、自分たちとは違った者に対しての潜在的な攻撃性が浮き彫りにされていくようで、人間はここまで醜くなれて、人を罵倒することができるのかという、ヘイトクライム全てに共通する発端構造をのぞき見しているかのような感覚になる。

そしてそういったことが現実社会で常に起きていて、環境によって、集団心理によって、実は被害者にも加害者にもなりうる可能性があるということが、何より恐ろしく、単にフィクションとしては観ていられない理由だ。

〇作品情報
監督・脚本:ベス・デ・アラウージョ
出演:ステファニー・エステス、オリヴィア・ルッカルディ、エレノア・ピエンタ、メリッサ・パウロ、シシー・リー、ジョン・ビーバースほか
2022年/アメリカ/英語/92分/16:9/5.1ch/原題:soft&quiet
日本語字幕:永井歌子/提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム/G
公式サイト:soft-quiet.com
5月19日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館ほか全国公開
(C)2022 BLUMHOUSE PRODUCTIONS, LLC. All Rights Reserved.

【あわせて読む】これまでの「シン」シリーズとは一線を画す『シン・仮面ライダー』に見る庵野秀明の“こだわりと本質”

RECOMMENDED おすすめの記事