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UPDATE|2023/05/02

ヒューマンドラマとしての『教場0』、新垣結衣が見せた説得力と、風間公親がラストに送った言葉

『風間公親―教場0―』(フジテレビ)公式サイトより

2020年に放送された『教場』(フジテレビ系)、2021年に放送された『教場II』、そして『教場』の前日譚として現在放送されている『風間公親-教場0-』。基本的には1話完結で各話で起きた事件を新人刑事が、“刑事指導官”の風間公親(木村拓哉)の厳しい指導を受けながらも解決に導くミステリードラマとなっている。

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 本作はただ単に事件が起きて犯人を捕まえる、という構成ではない。『古畑任三郎』(フジテレビ系)のように冒頭に犯人が事件を起こす様子が映されており、視聴者としては“犯人捜し”以外の謎解きを楽しむ仕様になっている。それも突きつけられる謎は各話で異なっており、2話では「佐柄美幸(宮澤エマ)はどのようにしてアリバイを作ったのか」、3話では「椎垣久仁臣(佐々木蔵之介)が毒殺した宇部祥宏(浅利陽介)の不振な行動」など多種多様。犯人捜しではない、それ以外の謎が解き明かされていく展開は、王道のミステリー作品とはまた違ったカタルシスを得られる。

 また、ミステリー作品はどうしても複数の登場人物の言動に目を光らせる必要があり、謎も次から次へと出てくるため頭がこんがらがりやすい。だが、風間が「何が解くべき謎なのか?」を新人刑事、もとい視聴者に提示してくれるため、置いてけぼりになることもない。加えて、風間が新人刑事に「仕留められるか?」と確認するシーンを見ると、風間の低音と「仕留められるか?」という言葉の響きも相まって、視聴者としても推理しなければいけないような気持ちになり、作品の世界にどっぷりつかることができる。

 犯人が序盤にわかる、というメリットは他にもある。それは犯人の日常にもスポットライトが当たるため、ミステリーだけではなくヒューマンドラマとしても楽しむことができる点だ。1話では妻をひき逃げして殺した男を銃殺した益野紳祐(市原隼人)、2話では息子が不登校になっていることに取り合ってくれない担任教師を撲殺した美幸など、各犯人の視点でも描かれている。

 そのため、殺人は決して許されない行為ではあるが、やむにやまれぬ事情があっての犯行だったことが伝わり、犯人と自分を重ねることも可能。その一方で、各話の犯人は基本的に同情できる部分を持ているが、3話の椎垣久は自身の昇進のために宇部を殺す、という身勝手極まりないもの。こういったアクセントが入ることで、ただただ“犯人に同情する”というパターンにハマらず、新鮮な気持ちで各話を堪能できる。
AUTHOR

望月 悠木


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