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UPDATE|2023/07/06

『THE DAYS』世界で快挙の役所広司が語るドラマへの思い「今もまだ福島原発は全く終息していない」

『THE DAYS』日本外国特派員協会主催 記者会見より役所広司


Q.同じ原案で作られた作品は渡辺謙主演『Fukushima 50』に続く2作目。映画の後に更に同じ原作で改めて撮ろうとした経緯、理由を教えてほしい。

増本 大前提として、新しく作ろうとしたのではなく、映画と同時期に撮り始めだが、8時間の映像が必要で、コロナ禍があり、撮影が一年半中断した。この前提で述べる。

映画は残った69人の作業員の英雄的行動を作品にした。我々は、『THE DAYS』と銘打っているように、原発で起こった“あの日々”を描きたかった。残った人たちだけではなく、官邸、東電、ニュースを見た人々など、思想を排除して多角的に描こうとした。いろんな視点で、描く出来事も多いため8時間のドラマというスタイルを選んだ。

Q.門田さんに取材し、『Fukushima 50』も観た。どの作品でも、この数日間、ひとつ決断を間違えば大変な事態になる状況を描いている。12年たった今でもあの原発事故の影響は残っている状況。プロジェクトを終えた今、原発についてどのような考えをもっているか。

増本 難しい問題だから簡単には答えられない。原発の是非を問う前に、皆さんに関心を持ってもらうべきだと考えて作った。政府は原発を作ろうとしているが、世の中はそのことを知らない。両親も友人たちも同様で、関心がない。そんな中で、稼働延長や増設が進んでいることに関心を持ってもらうべきだと思っている。

役所 もちろん地震や津波があって事故が起こったりと、原発は怖いもの。それは皆さんわかっていると思うし、それ以外で電力が手に入る方が良いに決まっている。この出来事をエンターテインメントとして描いていいのかという不安はあった。

増本プロデューサーの、あの時、あの場所で何が起こっていたのかを伝えていかなきゃいけないのではないか、また、この後の過程も描いていきたいという強い思いを聞き、これは第一シーズンに参加したいと思った。

エネルギーについては、誰もが考えていかなければいけないことで、原発については国民が答えを出さなければいけないことだと思っているので、この『THE DAYS』という作品を見て考えるきっかけになっていけば。

Q.配信で楽しむ文化が広がっているが、日本のドラマの在り方にどんな影響を与えたか。

増本 リサーチしてないので分からないが、なぜ作るのか、日本人が作る意味を考えるようになった。これまでは日本人に向けていたが、Netflixなどによって、世界に伝えたいメッセージかどうかを真剣に考えるようになった。『THE DAYS』は、我々日本人の手で作り、最後まで責任を持って向き合いたいというメッセージを伝えたいと考えて作った。

役所 この作品は、まず地上波のドラマでは内容的に100%通らないと思う。内容を伝えるための自由度も高い配信は有効だ。増本プロデューサーはそういう思いもあり、フジテレビを退職して第一作目として地上波ではできないこのドラマを作ったのだと思う。配信の浸透によって、我々の表現の場は広がったと思っている。

Q.このような作品が問題を知るきっかけとなった。増本さんにシーズン2の構想を聞きたい。

役所 この出来事を描き続けるには、増本さんが生きている間には表現できないドラマになると思っています。そのために世界中で観ていただいて、今後も描いていけるようにみなさんのお力をお借りしたい。自分が演じた吉田所長は、残念ながら存命ではないが、自分が演じられる役があれば出たい。

増本 役所広司さんは吉田さんが亡くなっているとお話されたが、エピソードゼロの可能性もあるから、ぜひオファーしたいと思っている。

今もまだ福島第一原発の事故は全く終息していない。最終話でも語ったように、数百トンあるデブリはまだ排除されず、まだ何万人もの人たちが家に帰れていない。そして、今日も少なくとも3千人の人たちが廃炉作業をしている。そのことを皆さんに忘れてほしくない。できることであれば、皆さんのお力添えで本当に続編がつくれるようになり、この出来事を描き続けることができれば意味があると思っている。

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