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UPDATE|2023/08/22

『VIVANT』乃木は“母”と結ばれ“父”を抹殺する? 物語はギリシア神話的な輪郭を帯び始めてきた

『VIVANT』第7話予告(TBS公式YouTubeより)



ジャミーンの手術も無事成功に終わり、薫(二階堂ふみ)との仲も急接近。「どうしてくれるんですか。乃木さんのこと、もっと知りたくなっちゃったじゃないですか」とド直球な告白。二人の関係性の変化が、これからのドラマの鍵になりそうだ。

だが今回のエピソードで明かされたのは、乃木が“愛という感情が分からない人間”であること。幼い頃に両親と生き別れ、親の愛を知らないまま記憶障害になってしまった彼は、人を人たらしめる最も重要な感情が抜け落ちている。その愛という不確かな存在を知るために、彼は大金を注ぎ込んで手術費用をまかない、ジャミーンの手を握って必死にその生還を願う。

「僕は、あなたとジャミーンが一緒にいる姿を見るだけで、すごく温かい気持ちになれるんです。薫さんを見ていると、母親を思い出すんです」

薫とジャミーンの二人に、乃木は自分自身と母親の姿を重ね合わせていた。そして彼は実の父親であるベキとも会って話をしたいと、別人格のFに訴える。父に会って愛を確かめたい乃木と、テロ組織のリーダーは抹殺すべきだと語るF。二つの人格は完全に対立する。

薫という仮の<母親>と結ばれ、自らの手で<父親>を殺す物語になるのだとしたら、それはもう完全にギリシア神話におけるオイディプースの物語だ。そうと知らずに母親と結ばれ、父親を葬ったオイディプースは、エディプス・コンプレックスの語源でもある。

となると別人格のFとは、オイディプースの物語へと導こうとするFATHER(父親)の頭文字なのだろうか。乃木の中に、父親と息子が共存しているのだろうか。『VIVANT』はここにきて、ギリシア神話的な輪郭を帯び始めてきた。

【あわせて読む】「敵か味方か」…壮大なスケールのドラマ『VIVANT』が覆すテレビドラマの常識
AUTHOR

ルイ 竹島


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