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UPDATE|2023/09/21

『ハヤブサ消防団』最終回から考える、カルト教団からの負の連鎖を断ち切る難しさ

木曜ドラマ『ハヤブサ消防団』公式サイトより(テレビ朝日)

『ルーズヴェルト・ゲーム』や『陸王』などを手がけた池井戸潤氏の同名小説が原作のドラマ『ハヤブサ消防団』(テレビ朝日系)。9月14日に最終話(9話)が放送され、カルト団体の恐ろしさを示す幕切れとなった。

【関連写真】中村倫也が出演した映画『ハケンアニメ!』場面カット

人気に陰りが見えているミステリー作家・三馬太郎(中村倫也)は、ハヤブサ地区という田舎に構える亡き父が残した屋敷に移り住み、そこで連続放火事件が起きていることを知る。真実の究明を進める中、放火事件には新興宗教・アビゲイル騎士団が関与していたことが発覚。

アビゲイル騎士団は過去に代表と幹部ら数人が12人の信者を拷問して死に至らしめた過去があったが、聖母アビゲイル教団と名前を変えて水面下で着々と活動をしていた。そして、ハヤブサ地区を新しい拠点にするために乗っ取りを計画していたことを知る。聖母アビゲイル教団の顧問弁護士を務める杉森登(浜田信也)は、アビゲイル騎士団の元信者である立木彩(川口春奈)を言葉巧みに騙し、教団の聖母と祭り上げ、信者を集めて聖母降臨の儀式を実行しようとする。

しかし、太郎が彩を説得して、さらには太郎の所属するハヤブサ消防団の面々の活躍によって杉森の計画を潰してハヤブサ地区を守ることに成功。また、杉森が放火だけでなく殺人にも関わっていたことを知った多くの信者は教団を抜け、聖母アビゲイル教団は実質壊滅となった。

構図的には杉森の悪事を太郎達が阻止して多くの人達を救った、という幕切れとなったが、ハッピーエンドだったのかは判断が難しい。9話ラストに聖母アビゲイル教団の信者が喫茶店で、新たに聖母を祭り上げて信者を勧誘するシーンがあった。聖母アビゲイル教団は再び名前を変えたのかどうかは不明である。ただ、すでに活動を再開しており、今後ハヤブサ地区のように命を落とす人、放火被害に遭う人は現れるかもしれない。とにもかくにも、カルト宗教がいかにしぶといのか感じずにはいられなかった。

とはいえ、「カルト宗教がしぶとい」と言うよりは、「それだけ救いを求めている人が多い」とも言えないか。勧誘活動に努めていた信者達が、何を目的に教団再建を目指しているかはわからない。金銭目的かもしれないが、“縋れるもの欲しさ”という可能性も高い。そうであれば、縋れるものを奪った太郎達に感謝するどころか、恨んでいる信者も珍しくないのではないか。
AUTHOR

望月 悠木


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