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UPDATE|2023/09/21

『ハヤブサ消防団』最終回から考える、カルト教団からの負の連鎖を断ち切る難しさ

木曜ドラマ『ハヤブサ消防団』公式サイトより(テレビ朝日)


カルトを取り上げたドラマとして『TRICK』(テレビ朝日系)のあるシーンにも触れたい。同作のエピソード1『母之泉』では、カルト団体『母之泉』の教祖であり、ビッグマザーこと霧島澄子(菅井きん)が登場する。

霧島は読心術や空中浮遊といった“特殊能力を使える”として、多くの信者から崇拝されていた。しかし、山田奈緒子(仲間由紀恵)と上田次郎(阿部寛)の働きによって『母之泉』は解体。霧島は自殺、霧島の側近として様々な悪事を指揮していた津村俊介(山崎一)は逮捕されて一件落着したが、モヤモヤの残る終わり方だった。

津村は警察に連行される時、教祖だけでなく母之泉を失って悲しみに暮れる信者達を見ながら、「正しいことをしたつもりか?」「ビッグマザーを失ったあいつらになにが残る?希望も救いもねぇ人生が待ってるだけだ」「本当にあいつらを救おうとしたのはどっちだ?」と山田に吐き捨てるシーンが印象的だった。津村の発言に加えて、勧誘を続けている聖母アビゲイル教団の信者を鑑みると、そういったカルトが心の癒し、支えになっていた人も少なくないのではないかと思えてしまう。

もちろん、殺人や放火などは決して許されない。たとえそれが人々を救うための手段だったとしても。さらには、旧統一教会が問題視され、二世の人の苦しみを見聞きする機会も増えた。カルト団体がもたらす悪影響を嫌というほど痛感させられ、擁護しようとは決して思わない。それでも、カルトが救いになっている人がいるという事実に向き合うことも、苦しむ人を救うためには大切なプロセスなのではないか。

カルト団体を潰して、抜けさせて終わりではなく、その後の信者に対するサポート体制を整備しなければ、終わりがないことに気づかされる最終回でもあった。

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AUTHOR

望月 悠木


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