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UPDATE|2023/12/24

『セクシー田中さん』生見愛瑠、次世代バラエティ女王が確かな演技力で体現した等身大の生きづらさ

『セクシー田中さん』(日本テレビ)公式サイトより

放送中のドラマ『セクシー田中さん』(日本テレビ)で、木南晴夏演じる主人公・田中さんに強い憧れを持っている派遣OL・倉橋朱里。演じるのは”めるる”こと生見愛瑠だ。モデルやタレントとしても活躍し、目にしない日はないほどの人気ぶりだが、演技の経験はそれほど多くはない。

【関連写真】『セクシー田中さん』主演、木南晴夏 引き締まった美ボディショット

生見の演技が注目を集めた作品の一つに、映画『モエカレはオレンジ色』(2022)がある。女子高生と消防士の恋を描いた青春ラブストーリーで、少女漫画原作らしい、さわやかで可愛らしい恋模様が見どころだ。

当時からモデルやタレントとして生見の活躍は著しいものであったが、演技経験が少ないなか、青春映画のヒロインを務めることは大抜擢といえるだろう。シャイで真面目な消防士・蛯原を岩本照(Snow Man)が演じ、蛯原の体格や無骨な雰囲気と対照的に、生見が演じるヒロイン・佐々木萌衣は華奢で可愛らしかった。

友達のいない”ぼっち”女子高生でありながら、弟思いで家庭的、さらに派手すぎない可憐さが視聴者にも好印象に映ったのではないだろうか。結果として、本作への出演が第46回日本アカデミー賞で新人俳優賞を受賞することにつながった。

他方で、今年4月クールで放送されたドラマ『風間公親-教場0-』(フジテレビ)にゲスト出演。人気工芸家との間にできた子どもを妊娠している19歳の大学生・萱場を演じた。出産後、ひとりで子どもを育てる予定だったが、父親である人気工芸家が子どもを引き取る意志を示し、対立。結果、萱場は人気工芸家を殺してしまう。

風間(木村拓哉)らがその真相を暴くことになるのだが、生見の切羽詰まって鬼気迫るお芝居から、萱場に感情移入した人も多いだろう。ゲスト出演であり、犯人役でもあるため役を作り上げる難しさもあっただろうが、見事に演じきっていた。

そして放送中の『セクシー田中さん』で生見が演じる倉橋は、会社の同僚・田中さん(木南)の人柄や、田中さんが踊るベリーダンスに心を奪われる。憧れが募った結果、今やなかば追っかけをしている状態だ。

倉橋自身は、若さと、若さからくる可愛らしさしか取り柄がないと思い込んでいて、一見キラキラした今どき女子ながら、生きづらさを感じているキャラクター。流行りのメイクと服装を鎧にして、なかなか本心を打ち明けられる存在が見つからないでいた。そんな中で田中さんと距離が近くなったのをきっかけに、倉橋自身も周囲との付き合い方や将来への考え方を改めていくのだった。

ドラマは佳境を迎えている。田中さんとの関係はすでに強固なものになりつつあるが、倉橋一筋で、話数を重ねるごとに仲を深めている小西(前田公輝)との恋の行方も見逃せない。

倉橋は生見の実年齢にも近く、等身大の女性とも言えるだろう。しかし、等身大の女性をのびのびと演じることが簡単だとは限らない。役に合わせて無理やりテンションを上げたり、下げたりして照準をあわせてお芝居をする場合もあるだろうが、演者本人の人柄をそのまま役に投影できるのは強みだろう。
AUTHOR

鳥羽 竜世


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