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UPDATE|2023/12/31

『ブギウギ』小夜(富田望生)とスズ子の関係性から見る、”与えられる側”と”与える側”の存在

スズ子(趣里)と小夜(富田望生)/『ブギウギ』第54回 写真◎NHK

趣里が主演を務めるNHK連続テレビ小説『ブギウギ』(総合・月曜~土曜8時ほか)。物語の中で強いインパクトを放ち続けているのが、小林小夜(富田望生)だ。時にはトラブルメーカーになりながらも、スズ子の付き人として日々奮闘する小夜。彼女の存在は、物語に一体何をもたらそうとしているのだろうか。

【写真】物語の中で強いインパクトを放つ小夜(富田望生)とスズ子(趣里)

第42回でいきなりスズ子の楽屋に飛び込み「オレを弟子にしてくだせえ!」と言い放った小夜。スズ子への熱い思いを東北弁で語り、半ば無理やりスズ子の下宿先に居候することになる。この小夜の破天荒な姿と突発的な行動に、どこか見覚えを感じた視聴者もいたのではないだろうか。そう、受験日を間違えたにも関わらず「せめて歌を聴いてほしい」と強行突破でUSKに滑り込んだ幼き日のスズ子の姿である。

このように、スズ子と小夜は似ているところがあるとたびたび感じる。小夜はこれまで、思ったことをすぐに口に出し、遠慮のない態度で視聴者の反感を買ったこともあっただろう。しかし、子ども時代のスズ子も同じく、不意な一言で親友・タイ子(子役・清水胡桃)を傷つけてしまったり、USKでもいらぬ事を言って先輩を怒らせていたのだ。また、スズ子は実母と離れ血の繋がりのない花田家で育ったが、小夜もまた親に捨てられ12歳で奉公に出されたりと、出生の複雑さも共通している。

「昔のスズ子と似ている」という視点で小夜を見ると、小夜がスズ子の”別パターンの人生”を歩んでいるように思えてくる。愛人の子として生まれたスズ子が、あの時ツヤ(水川あさみ)に引き取られることなくキヌ(中越典子)の元で暮らしていたら…と想像してみてほしい。親戚の家をたらい回しにされ、奉公先でも厄介者扱いされ、もちろんUSKの舞台を夢見ることなどできない。どこかでたまたま耳にした茨木りつ子(菊地凛子)の歌に惚れ込み、弟子入りを申し込む…といった人生があったかもしれないと思うのだ。

スズ子は運よく花田家という温かな家族の元で育ち、USKの仲間と切磋琢磨し、自分の才能を認めてくれる羽鳥善一(草彅剛)という存在に出会えた。早くに母親を亡くし、戦争で弟を亡くし…と決して平坦な人生ではないが、それすらも”福来スズ子”として芸の肥しにできているのである。だが小夜は、家族もおらず、友達もおらず、自分を認めてくれる存在にも出会えなかった。他人を疑ったり、過度に自分を卑下しているのは、”義理と人情”を知らずに生きてきたからだろう。だからこそ、梅吉(柳葉敏郎)のように自分を歓迎してくれる存在に、必要以上に心を開いてしまったのだ。

AUTHOR

音月 りお


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