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UPDATE|2023/12/19

【何観る週末シネマ】パキスタンのお見合い結婚を通して”そこに愛は生まれる”のかを現代的視点から描く

(C) 2022 STUDIOCANAL SAS. ALL RIGHTS RESERVED.

この週末、何を観よう……。映画ライターのバフィー吉川が推したい1本をピックアップ。おすすめポイントともにご紹介します。今回ご紹介するのは、12月15日(金)より公開されている『きっと、それは愛じゃない』。気になった方はぜひ劇場へ。

【写真】お見合い結婚で愛は生まれるのか…『きっと、それは愛じゃない』場面写真【20点】

〇ストーリー
ドキュメンタリー監督として活躍するゾーイは、久しぶりに再会した幼馴染カズの見合い結婚までの軌跡を次回作として追いかけることに。果たして、「愛がなくても結婚できるの?」という疑問を抱えるゾーイの見つけた答えとは─?

〇おすすめポイント
今作の監督を務めるのは、イギリスで映画制作を学んだのちに、日本でも公開された『女盗賊プーラン』(1994)などのインド映画を撮ってきたシェカール・カプール。

ケイト・ブランシェットを主演にむかえた歴史超大作『エリザベス』(1998)が第71回アカデミー賞において7部門にノミネートされ、世界的評価を得たことで、海外進出を成功させた映画監督としても知られている。

一方で長編監督デビュー作のインド映画『Masoom』(1982)の現代版を制作するという企画もあるだけに、またインド映画界に復帰するのではないかとも噂されているなど、今後の活躍に注目があつまっている。

そんなシェカールが今作で描いたのは、パキスタンに未だに根深く残る、両親の決めた相手とのお見合い結婚についてだ。シェカール自信がパキスタン人であることから、今まで手掛けてきた作品のなかでも一番身近な内容ともいえる。

パキスタンだけに限らず、スリランカ、バングラデシュ、イランなどの映画を観ても、ここ最近でテーマとしてよく描かれるようになったのが、保守的概念からの脱却である。

インドもかつては、親が決めた相手とのお見合い結婚が当たり前とされてきたし、今も保守的な地域によっては根深く残っていることではあるのだが、『おかしな子』(2021)や『美に魅せられて』(2021)といったお見合い結婚に対しての疑念をぶつけたものもあれば、お見合い結婚というもの自体が時代錯誤の象徴として描かれる作品も多くなってきている。

今作は、イギリスに住むパキスタン系移民の青年のお見合い結婚を通して、「そこに愛は生まれる」のかということを、現代イギリス人女性の視点から俯瞰的に描いた作品となっているのだが、そもそも「愛」とはどう生まれるものなのかという哲学的なテーマにも触れているものの、全体的にそれらのテーマをカジュアルに描いている。

恋愛結婚だからといって、愛が維持されるわけではないという考えを持つカズは、恋愛に対しては消極的でドライ。親の決めた結婚であっても、それほど抵抗がなく受け入れるのに対して、結婚は恋愛の先にあるべきと思っているゾーイは男選びを失敗し続けている。つまり愛を追いかけてもたどり着けない時間を費やすことが幸せに繋がるのかにも疑問がある。

そんなふたりの目線を通して、恋愛や結婚を現代的な視点と保守的な視点を交差させるのに加え、ゾーイがドキュメンタリー監督という設定を活かしたストーリー構成にも注目してもらいたい。

(C) 2022 STUDIOCANAL SAS. ALL RIGHTS RESERVED.

〇作品情報
監督:シェカール・カプール
出演:リリー・ジェームズ、シャザド・ラティフ、シャバナ・アズミ、エマ・トンプソン、サジャル・アリーほか
2022 / イギリス / 英語・ウルドゥー語 / 109 分 / カラー / スコープ
5.1ch / 字幕翻訳:チオキ真理
原題:WHAT’S LOVE GOT TO DO WITH IT? / G
提供:木下グループ 配給:キノフィルムズ
HP:wl-movie.jp

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