FOLLOW US

UPDATE|2019/11/20

伝説の『11・20』から四半世紀、女子プロレスブーム到来の予兆とともに今こそ平成の対抗戦ブームを総括する

『憧夢超女大戦 25年目の真実』(彩図社)


──いまだから話せる、というエピソードは多かったですよね。「控室に飛び交う札束」とか「癒着」「騙し討ち」「暴行トラブル」「絶縁」……キーワードだけ抜き出したら、とても平成の女子プロレスの本とは思えませんよ!

小島 そういうことが積み重なって、東京ドーム当日には各団体の信頼関係はほとんどなくなってしまって、ついには試合前のバックステージでとんでもない「事件」まで起こる。平成元年を起点としたドキュメントとしては、本当に短い期間を切り取ったものになるんですけど、後楽園ホールすら埋められなくなった女子プロレス業界が、ひょんなことから再浮上し、対抗戦ブームで東京ドームまでたどりつき、そこからわずか数年で全女が倒産してしまう……こんなウソみたいな話、ありますか? 僕はまさにその時期を最前線で取材してきたので、ある意味、裏も表も知ってはいるんですけど、経営にタッチしていたフロント陣は、さらに「その裏」までも知っている。いまになって「なるほどなぁ~」と思うことがたくさんありましたね。当時、女子プロレスを観ていた方であれば、かなり楽しめるかと思いますよ。しかもリング上の美しい記憶はけっして汚れない内容ですから。

──たしかに読後感は悪くないです。

小島 あとは歴史の再評価ではないですけど、なぜか、この東京ドーム大会ってネット上ではすごい悪者にされているんですよ。あの興行をやったばかりに女子プロレスブームは終わったとか、ね。まるでこの東京ドームが「女子プロレス最後の日」だったような論評もあるんですけど、実際には1996年ぐらいまではブームの余韻は続いているんですよ。たしかにバブルは弾けたけれど、即、終了ではなかった。そういう「アフタードーム」の真実も含めて、この一冊で再評価というか、再確認を出来たらな、という想いはあります。

──この本の出版に合わせるようにして、ブシロードが女子プロレス界に進出。東京ドーム以来のブームの予感がします。

小島 本当に偶然なんですよ。そもそも、この本は平成のうちに世に出るはずだったんですから。でも、書いているうちにあのニュースが流れたことで、ちょっと救われましたね。もう二度と女子プロレスブームは来ない、となったら、この本って女子プロレスの墓標みたく見えてしまうじゃないですか? でも、ひょっとしたら近い将来、令和の女子プロレスブームが到来するかも? と思うだけで、この本の出口が明るいものになる。隠し味としては、この本の取材をしている時期って、ロッシー小川氏がブシロードと絶賛話し合い中だったんですよ、おそらく。それを隠しつつ、いろんなことを語っている。なんなら、女子プロレス界の未来にも言及しているというのは、なかなか面白いポイントかな、と。

RECOMMENDED おすすめの記事