FOLLOW US

UPDATE|2021/05/09

卒コンでメンバーへ贈ったサプライズ…SKE48松井珠理奈が体現した泣き笑いのアイドル人生

(C)2021 Zest,Inc./ AEI


 あの日、珠理奈はコンサートのリハーサルには出ずに、ナゴヤドームの小部屋の隅で泣いていたという。心配したSKE48の全メンバーは大将を呼びに行った。

 結果、珠理奈は1位を獲得した。イベントがすべて終わり、筆者は会見場に向かった。すると、珠理奈はすでにスタンバイしていた。まだメディアが勢ぞろいしていないのに、である。異例だ。会見が始まる前、珠理奈は筆者の姿を目にとめると、「おめでとうって言わないで! 泣いちゃうから」と笑顔を見せた。その笑顔はいつもとは違うものだった。

<1位になったのはいいけど……本当に大丈夫か?>

 心ではそう思ったが、筆者は何も言えなかった。その後、珠理奈の休養が発表された。

 あの日のことはSKE48にとってタブーになっていた。筆者にとっても初耳だった。だが、珠理奈は忘れていなかった。どこかであの日の感謝を伝えなければ卒業できない。そんな思いが珠理奈にはあったのだろう。

 支配人・斉藤真木子の言葉を借りれば、珠理奈は「心のトゲをすっと抜いてくれた」。それが、珠理奈がメンバーに贈るプレゼントであり、サプライズだった。

 この日のサブタイトルは「珠理奈卒業で何かが起こる⁉」だった。その「何か」とは、SKE48のシステム的な変革の発表だと思い込んでいたファンも少なくなかったはず。しかし、珠理奈はその期待さえ肩透かししてみせた。珠理奈にとって大事なものは、人間として持つべき感謝をファンの前で口にすることだった。この発想は誰も持ち合わせていなかった。

 花道の奥へと消えていく手前で、珠理奈はこう呼びかけた。

「みんな楽しめよ!未来を」

 その顔は笑っていた。が、見方によっては泣いているようにも見えた。泣き笑いのアイドル人生だった。今まで歩みを集約したような表情だった。

 珠理奈が作詞した『オレンジのバス』が会場に流れた。「オレンジ」とはSKE48のグループカラーだ。「バス」とは秋元康がよく作詞に込める言葉だ。やはり珠理奈は根っからの48人間だ。

 卒業後の珠理奈はどっぷりと浸かった48グループから離れ、違う人生を歩んでいく。これからはひたすら自分のやりたいことを追求すればいい。珠理奈が「頼もしい」と話す後輩たちは、もうバスに乗って走りだしている。

【あわせて読む】SKE48斉藤真木子が語る松井珠理奈卒コン「最後のスピーチで珠理奈さんが総選挙の話をした意味」
AUTHOR

犬飼 華


RECOMMENDED おすすめの記事