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UPDATE|2023/02/24

【何観る週末シネマ】約7000人の命に値段を付けた実在の弁護士をマイケル・キートンが熱演『ワース 命の値段』

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この週末、何を観よう……。今週公開の作品の中から、映画ライターのバフィー吉川が推したい1本をピックアップ。おすすめポイントともにご紹介します。今回ご紹介するのは、2 月 23 日(木・祝)より公開されている、『ワース 命の値段』。気になった方はぜひ劇場へ。

【写真】名優マイケル・キートンの演技にも注目『ワース 命の値段』場面写真【5点】

〇ストーリー
2001 年 9 月 11 日のアメリカ同時多発テロ発生後まもなく、政府が被害者と遺族を救済するための補償基金プログラムを立ち上げる。特別管理人を任されたのは、弁護士ケン・ファインバーグ。調停のプロを自認するファインバーグは、独自の計算式に則って個々人の補償金額を算出する方針を打ち出すが、さまざまな事情を抱える被害者遺族の喪失感や悲しみに接するうちに、いくつもの矛盾にぶち当たる。約 7000 人の対象者のうち 80%の賛同を得ることを目標とするチームの作業は停滞する一方、プログラム反対派の活動は勢いづいていく。期限が刻一刻と迫るなか、苦境に立たされたファインバーグが下した大きな決断とは......。

〇おすすめポイント
911テロの被害者遺族に補償金を出すことになるが、その金額をどう決めるべきなのか、誰に渡すべきなのか、遺族の選別はどこまでにするのか……。

ただでさえ命をドル換算しなければならいプレッシャーの中で、予期せぬ突然の死、タイミング的にまだ配偶者ではなかったり、同性愛者など法的に関係性が認められていなかったりする場合。さらには世帯主を失って日々の生活にままならない者、余命があとわずかで少しでも早く、遺される子どもの里親を探すお金が欲しい場合など、通常案件としても複雑な事情を抱えている人たちもたくさんいて、金額はもちろん、その配分や受取人の決定を下すのが難しすぎる状況だ。

誰もが納得する補償金など不可能にも思えるし、時間もない。本当に着地点を見つけ出すことができるのだろうか。

そんな大役を報酬ゼロで引き受けた、実在の弁護士ケン・ファインバーグの実話をベースに、『ザ・フラッシュ』(6月16日公開予定)でバットマンを再び演じることも話題の名優マイケル・キートンがファインバーグを熱演。

ファインバーグは、独自の計算式に基づいて補償金を分配することが遺族のためになると信じて行った行動であり、実際に遺族のことを想っていないわけではない。

しかし世間からは、国民を政府の言うなりに丸め込もうとしているのではないかという非人道者として扱われ、非難を受けるストレス過剰な状況にスタッフ共々耐えながら、どうやって解決方を導き出していくか。その過程こそが人間の本質を描いているようなのだ。

弁護士や鑑定人は私情を持ち込むべきではないといわれる職業ではあるが、ひとりひとりへの思いやり、人間的な感情で動くことで見えてくるものもあるということを語った作品だといえる。

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〇作品情報
監督:サラ・コランジェロ
脚本:マックス・ボレンスタイン
出演:マイケル・キートン、スタンリー・トゥッチ、エイミー・ライアンほか
2019 年/アメリカ/英語/118 分/シネスコ/カラー/5.1ch/原題:WORTH
日本語字幕:髙内朝子
提供:ギャガ、ロングライド
配給:ロングライド
公式サイト : https://happinet-phantom.com/wakare-movie/
2 月 23 日(木・祝)、TOHO シネマズ シャンテほか全国公開

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