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UPDATE|2023/07/15

相撲を諦め芸人に…『サンクチュアリ』出演の義江和也が語る亡き父との約束「親父、見てるか?」

義江和也 撮影/松山勇樹



「相撲をやるためだけに入った高校でしたが、その層の厚さたるや想像を絶しました。県大会で1位を獲ったとか、そんな奴らばかりが全国の中学から集まってくるんです。自分は高校に入った時点で90kgしかありませんでしたが、他の部員は平均で150kgくらい。もう話になりませんよね。

高1からちゃんこ番も経験しました。そして日大相撲部に進むんですけど、ここはさらなるピラミッド社会。埼玉栄高校や石川県の金沢学院大附属など、強豪校の猛者ばかりが集結する感じでした。実際、そのまま力士になった部員も多いですしね。そして結局、自分は挫折するんです。上には上がいるということを思い知らされて」

たとえば当時、義江と同じ釜の飯を食った仲間には現・西前頭筆頭の翔猿正也がいる。その圧倒的な強さもさることながら、稽古に取り組む真摯な姿勢や自己コントロール術を目の当たりにして「とても真似できない」と打ちひしがれたという。では全青春を相撲にのみ捧げてきた自分は、これから何をするべきなのか? そう自問した末、出た答えがお笑いの道だった。砂を噛むような苦しい練習を重ねる中、唯一の癒しがテレビで観るお笑い番組だったのである。

「『笑う犬』シリーズ(フジテレビ系)とか『水10!』(フジテレビ系)とか、特にコント系が好きでした。あとは高校生のとき、野球部の応援団に駆り出されたんですよね。要は高校に応援団部がなかったから、代わりに相撲部から1人その役を引き受けてくれという話になりまして。

自分は軽い気持ちで引き受けたんですけど、実際にやってみたら味わったことのない快感でした! みんなの前で歓声を浴びるというのは快感ですよ。それで大学のときに志半ばで相撲を諦めて、自分の進路を考えたとき、お笑いしかないと考えるようになりました。迷いはなかったです」

義江が猿河役で出演したドラマ『サンクチュアリ -聖域-』の効果で、今、大相撲に新規ファンが急増している。しかも放送されているのがNetflixということで、海外からの注目度も絶大だという。八百長や体罰など業界の暗部も余すことなく描いた内容ではあるが、作品の相撲界に対する貢献度は賞賛されてしかるべきだろう。

「皮肉なものですよね。頑張ったけど相撲で大成できなかった自分が、想像もしていなかったかたちで相撲の魅力を広めているわけですから。本当だったら、この喜びを誰よりも亡くなった親父と分かち合いたかった……。それでも今年のお盆は胸を張って墓参りをするつもりです。『親父、見てるか? 時間がかかったけど、俺たちの願いは叶ったんだぜ』って」

まっすぐ前を向きながら訥々と語る義江は、ドラマ内で主人公をネチネチとイビる猿河とはまったくの別人。亡き父から受け継いだ相撲スピリットを胸に、これからも視聴者を大いに楽しませてくれそうだ。
AUTHOR

小野田 衛


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