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UPDATE|2023/07/17

将棋界トップチャンネル・香川愛生女流四段が語るYouTubeへのこだわり「対局にいい影響も」

香川愛生 撮影/関根いおん

藤井聡太七冠の活躍により勢いを増した現在の将棋ブームは、まさにとどまることを知らない。ベテランから若手まで、様々な形で将棋の魅力を発信する中、可憐な姿からは想像できないほどの攻め将棋の使い手であり、「番長」の異名を持つ香川愛生女流四段は、YouTubeチャンネルの開設や数々のイベント出演だけでなく、自身が愛するゲーム・アニメと将棋の魅力を掛け合わせ、独自の普及活動に勤しんでいる。将棋ファンはもちろん、将棋ファン以外からも人気を集める彼女に、将棋の普及活動について、また自分を形成したカルチャーについての話を聞いた。

【写真】爽やかさただよう、香川愛生女流四段 撮りおろしカット【10点】

藤井聡太七冠の誕生、羽生善治九段の日本将棋連盟新会長就任、渋谷区に“観る将(観戦を主とした将棋ファン)の聖地”というコンセプトの施設「駒テラス西参道」が完成……と、2023年上半期だけを見ても将棋界に吹く追い風はすさまじく、「将棋ブーム」の勢いは増すばかり。

日々の対局の傍ら、YouTube活動、ゲーム雑誌で連載、コスプレ姿の披露と、幅広いジャンルを通じて将棋の魅力を伝える活動に尽力する香川愛生女流四段は、昨今の将棋界の潮流をどのように見ているのか?

「特にここ数年、将棋への関心がますます高まっているなと感じています。藤井聡太七冠の活躍が大きいですが、ニコニコ生放送や、ABEMAの将棋チャンネルなどで様々なコンテンツを発信し始めてくださったことで、それまで将棋界にいないとわからなかった世界を外に発信される機会が増えました。こうした様々な形で、将棋が多くの層の方にカジュアルに届いたのが、以前との違いだと思っております」

AI×将棋の可能性を提示した将棋ソフトとの対局「電王戦」、特別ルールを用いた団体戦「ABEMAトーナメント」の開催などの本格的なものもあれば、カラオケを歌いながら詰将棋を解く「詰将棋カラオケ」などの工夫に満ちた企画も含めて、この10年に渡って将棋ファン以外にリーチするキッカケが数多く生まれた。

「ネット・配信などの技術の発達により、昔なら届かなかったはずの方にも届くようになったのは嬉しく思います。やはり伝統文化ではありますから。長年守り続けてきた大事な要素は守り続けていくべきですし、それはファンの方も棋士の側も望んでいることです。ただ、同じこと“だけ”を継続していくことは、必ずしも『守り続けること』にならないなと個人的には思います。今の若い世代にも響くような試みにも挑戦することで伝統は新しい形で受け継がれていくと思いますし、ニコ生やABEMAが、現代に将棋を浸透させたいという想いを持って様々な試みをしてくださったからこそ、古くからの将棋ファンの方に受け入れられたんだと思います」

香川女流四段はニコニコ生放送での企画への積極的出演や、2019年4月にYouTubeチャンネル「女流棋士・香川愛生チャンネル」を開始するなど、次代に向けてより将棋の魅力を届けていこうと、長年取り組み続けている。現在のように「将棋に対し自分は何ができるか?」と強く想い始めたのは、20歳で女流王将のタイトルを獲得した時だった。

「タイトルを保持している間は、年齢やキャリアを飛び越え、女流棋士として上の序列にたつ立つわけです。そうなると、大先輩がたくさんいる中で、イベントでの代表挨拶を私が行うなど、自分が将棋界における責任を負う役割になったんだなと強く思ったんです。

指導が上手い先輩、トークが上手い先輩がいる中、私なりに将棋界での役割を持つにはどうすればいいか?と、そこから考えるようになったんです」

ひらめいたのが将棋同様に幼少から親しんできたアニメ・ゲームを使ってのアプローチだった。「『将棋のプロでもこういう人がいるんだ』という興味の持ち方も、入り口としてはいいのかな?という想いがありました」と振り返る。まさにその想いは、大きな呼び水となっている。

CREDIT

取材・文/田口俊輔 撮影/関根いおん


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