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UPDATE|2023/08/02

リメイク版『呪怨』、『変な家』…今一番怖い? ホラー界でひそかなブームの「家系」

『変な家』原作:雨穴/漫画:綾野暁(一迅社)



同じ方向性のホラーとしては、2020年に映画化もされた『事故物件怪談 恐い間取り』が挙げられるだろう。同作は事故物件住みます芸人・松原タニシのノンフィクション書籍で、間取りを通して独特な不気味さを感じさせてくれる点が共通している。

同作で松原が綴ったのは、これまで事故物件で体験した不思議な出来事の数々。殺人犯が住んでいた家や、前の住人が続けざまに自殺した部屋、住んでいるとひき逃げに遭う部屋など、不気味な家とそれに関連する事件が“間取り付き”で紹介されている。

作品を通して感じられるのは、心霊スポットに行く「遭遇もの」にあるような派手な恐怖ではなく、“普通の部屋が実は一番怖い”という日常のすぐそばにある恐怖。一見、何の変哲もない部屋を舞台に、むごたらしい事件や不思議な出来事が語られることで、何の変哲もない間取りが急遽変貌を遂げるから恐ろしい。

2020年にNetflixで配信された『呪怨:呪いの家』も、同じ類の「家系」ホラーといえるのではないだろうか。同作はタイトルから分かる通り『呪怨』シリーズをドラマ化した作品だが、設定はよく知られている清水崇監督のオリジナル版と大きく異なる。

時代設定が話数を追うごとに進んでいく構成で、80年代後期から始まり、最終話では90年代後期に。それぞれのエピソードは当時世間を騒がせた凄惨な実在の事件を思い起こさせるものとなっており、視聴者は強烈なリアリティを体感せざるを得ない。

オリジナル版同様、登場人物たちに理不尽な恐怖が次々襲いかかるが、この作品はあくまで「呪いの家」それ自体が主役。家という密室ならではの恐怖感や、凶悪事件の現場としての家という巧妙な設定を堪能させてくれるのが、一般的なホラー作品との違いだ。

こうした「家系」ホラーが流行した背景には、コロナ禍で家がより一層身近な存在となったことも関係しているのかもしれない。誰もが多くの時間を家で過ごすようになった現代では、家をめぐる恐怖が勢いよく伝染していく──。時代の最先端を突き進む新たなホラーの世界から、今後も目を離せない。

【あわせて読む】映画『忌怪島』で再注目…清水崇監督の傑作ホラー『呪怨』は何が凄かったのか?

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