決して何か大きなことを成し遂げるわけではないのだが、大の大人が一生懸命に取り組んでいる姿を見るだけでもグッと来る何かを感じさせてくれる。ハートウォーミングの要素も取り入れられた、単に笑えるだけのコメディ映画という作りにはなっていない。
また、 “スポ根”作品としてのベタな要素が盛り込まれているのも特徴のひとつ。精神的に問題を抱えるエースの登場など、予想がつく展開も多く、“古臭い”という声もあるだろう。だが、困難に立ち向かっていく彼らを見ていると、そうした予想できる展開でさえも心地よく感じることができるのだ。
「ドキュメンタリー」というもうひとつの目線が入っていることも作品全体の客観性を高めている。
当初、プロデューサーであるイ・ソミンが持っていた「ドキュメンタリー番組を撮りたい」という気持ちは作品にとってノイズになるのではないかと思われたが、蓋を開けてみると、そうではなかった。むしろドキュメンタリーという目線を入れることで、ホームレスたちの姿を自然に描くことができているのだ。
すなわち、彼ら自身の不真面目な部分や家庭の問題など、なるべくして今の状況に陥っているということをドキュメンタリー目線で見せることにより、その後の作品の中での成長をより顕著に感じることができるようになっている。
ハートウォーミング、スポ根、そして成長物語としても楽しむことができる本作品。人生を好転させたいと願うすべての人々の背中を押してくれるはずだ。
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