種崎のようなオールマイティな声優は、「カメレオン声優」などと呼ばれるが、以前のアニメ業界ではその筆頭として沢城みゆきが君臨していた。ちなみに種崎は憧れの声優として、沢城の名前を挙げたこともあり、令和のカメレオン声優としてその遺伝子を確かに受け継いでいると言えるだろう。
ただ、種崎の人気は「演技の幅」だけではないようにも思える。いろいろな声を出せるだけでなく、その1つひとつがどれもハイレベルで、なおかつ彼女にしか演じられないという個性を持っているのだ。
たとえば鎧塚みぞれやフリーレンといった感情が表に出にくいキャラクターは、比較的個性を出すのが難しいと言われているが、それでもセリフ1つで種崎が演じているとわかるほど話し方や声質に個性がある。さらには喜怒哀楽の演技がどれも真に迫っており、とくに鎧塚みぞれと吉川優子(演:山岡ゆり)が教室で本音をぶつけ合うシーンは、思わずもらい泣きしてしまった視聴者も多かったという。
また同系統のキャラクターでもそれぞれ演じ方が微妙に異なり、フリーレンや鎧塚みぞれ、『Vivy -Fluorite Eye’s Song-』のヴィヴィ、『魔法使いの嫁』(いずれもTOKYO MX ほか)の羽鳥チセの4人も、比較するとそれぞれ別の演技。また幼い少女の役ですら、アーニャとRPG『ルフランの地下迷宮と魔女ノ旅団』のルカでは演技のニュアンスが異なっている。
どんな役柄でも、アニメファンの期待に応えて120点の演技を見せてくれる種崎。まだ彼女の時代は始まったばかりだ。
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