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UPDATE|2024/03/27

米アカデミー賞で11部門ノミネートの映画『哀れなるものたち』、男性支配社会の意外な被害者を描く

映画『哀れなるものたち』


その一方で、当初は遊び目的で駆け落ちしたが、次第にベラに心からの恋心が芽生えその想いを強めていくダンカン。しかし、“支配”することで女性との関係性をつなぎとめる術を知らないダンカンは、高圧的な態度をより一層過激化させる。そんなダンカンを余所に、何かを知る喜びを追い求めるベラはどんどん1人で前に進んでいってしまう。

当初はレストランで食べ物を「不味いから」という理由で、人目をはばからずに吐き出していたベラをダンカンが注意するなど、ダンカンがリードしているシーンが目立った。しかし、ベラが自立していくと、途中までは大人に見えたダンカンの幼稚さが浮き彫りになり、その関係性は逆転する。ダンカンの振る舞いに幼稚さを覚え、どこか滑稽に思えることも本作の面白ポイントと言って良い。

しかしながら、このダンカンという登場人物にはついつい同情したくなる。男性支配社会で生きるダンカンは“女性と対等の関係を築く”という発想はない。ベラ、もとい女性との向き合い方を改められていれば、ダンカンは惨めさを抱くことはなかったように思う。男性支配社会は男性優位と考えられやすいが、男性にとってもデメリットの大きい世界なのかもしれない。

北川景子主演で2021年4月から放送された『リコカツ』(TBS系)では、亭主関白な緒原正(酒向芳)が妻の薫(宮崎美子)から結婚指輪と離婚届を残して逃げられる展開があった。ダンカンと似たように正も薫を見下す言動を見せており、対等な関係を築けていたとは言い難い。

薫のように昭和堅気な男性を見限る女性は珍しくなく、女性を支配することを当たり前と考えている男性は、ゆくゆくは冷笑される未来が訪れる可能性が高いのかもしれない。男性支配社会の問題点を男性が考える機会を与えてくれる映画にも感じた。

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AUTHOR

望月 悠木


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