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UPDATE|2024/03/14

新進気鋭の映画スタジオ「A24」はなぜ凄い!? アカデミー賞常連、話題作が続く理由【有村昆が解説】

ボーはおそれている



一方で、いわゆるインディペンデント作品と呼ばれる映画をつくるスタジオもあって、こちらはオリジナル脚本で、 渋めのキャストを起用して、できるだけ低予算でまとめていく。

このような独立系スタジオは、社会派ドラマやホラー、それに軽いコメディ映画などが得意なんですけど、A24もそういうタイプの作品を多く作っています。でも、ただのB級映画ではなく、アカデミー賞も受賞するような、今の時代に求められているセンスのある作品を送り出している。それも最初から賞を狙ってるような感じではなくて、ただ自分たちが面白いと思う映画を作っていて、それが賞レースの常連になっていったような感じなんです。

A24の一作目は、2013年に公開されたロマン・コッポラ監督の『チャールズ・スワン三世の頭ン中』というコメディ系の作品です。それからハーモニー・コリン監督の『スプリング・ブレイカーズ』とか、ドゥニ・ビルヌーブ監督の『複製された男』などを製作して、評判を高めていきます。

僕は、この初期の頃だと『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』というトム・ハーディ主演の作品が好きですね。 舞台は車の中だけ、登場人物はほぼ1人というワンシチュエーションで、タイトル通り86分で終わる映画なんですけど、よく出来た、渋いドラマでした。

2015年にはブリー・ラーソン主演『ルーム』がヒットして批評家からも絶賛され、2016年には『ムーンライト』でついにアカデミー作品賞を受賞します。この『ムーンライト』は、黒人問題に貧富の差やLGBTの要素も入ってくきて、非常に考えさせられる内容。それでいて撮影もすごく綺麗で、新たな時代に突入したなと感じられる映画でした。

A24は、このようなオルタナティブな監督を発掘して、メインストリームに押し上げるような役目も果たしていて、『聖なる鹿殺し』のヨルゴス・ランティモス、『レディーバード』のグレタ・カーウィグ、『ヘレディタリー/継承』のアリ・アスター監督と次々とブレイクを果たしています。そして、2022年に公開された『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は、アカデミー作品賞、監督賞、主演女優賞など、7部門を受賞するほどの成功を収めました。

この年のアカデミー主演男優賞は『ザ・ホエール』のブレンダン・フレイザーが獲りましたが、これもA24作品です。ある意味でスター再生工場というか、知る人ぞ知る古着店のような目利きのセンスがすごい。マーケティング重視ではなく、この俳優がいいと思って起用して、それでアカデミー賞も取っちゃうというのが粋ですよね。


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