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UPDATE|2020/03/15

安倍首相の実弟、岸信夫議員が語る政治と家族(4)「憲法改正に必要なのは徹底した議論」

左から井上咲楽、岸信夫 撮影/松山勇樹 



井上 私は憲法審査会も何度も見に行っています。毎回、傍聴人も多くて立ち見が出ることもあります。それだけ興味、関心が強いんだなと感じているんです。ただ、憲法審査会で話し合う内容は露骨に9条を避けているようにも思えます。(憲法審査会は、2007年に憲法改正の手続きを定めた国民投票法が成立したのを受け、衆参両院にそれぞれ設置された。憲法に関わる議論だけでなく、憲法改正原案が提出された場合には、審査して、採決することになっている)

岸 憲法審査会と前身の憲法調査会は長い間、コンセンサスを重視してきたんですよね。自民党から小さな政党まで含めて、みんなで合意できることをやっていこう、と。そういった姿勢を前面に出してきました。その点、9条は意見が対決する問題なので、取り上げるのが難しいのかもしれません。(憲法9条は、1項で「戦争の放棄」、2項で「戦力の不保持」と「交戦権の否認」を定め、憲法の基本原則の1つ「平和主義」を規定している)

井上 とはいえ、避けては通れない議論のように思えます。

岸 確かに、「憲法改正と言ったら、9条改正なのか」という意識も一般的にありますね。となると、9条改正について議論しない憲法審査会は何なの? となってしまうのは分かります。ただ、我々の立場は9条改正に特にこだわっているわけではありません。日本の憲法は制定以来、一度も改正されることなく、解釈の仕方では「世界一古い憲法」とも言えるものになっています。当然、条文には時代と合わない考え方になっている部分もあるでしょう。また、そもそもがGHQの手で作られたものでもありますから、この憲法でこの先も大丈夫なのだろうか、と。そうした認識で議論を深めていきたいわけです。

井上 なるほど。

岸 一方で、「憲法を改正しなくても、日本はずっと平和でいられたじゃないか」という声もあります。これはこれでわかります。必要なのは、それぞれの立場からの「憲法を改正すべきだ」、「すべきではない」という議論です。我々は「とにかく議論を重ねていきましょう」という立場。憲法を改正したい理由、改正したくない理由の両方を出してやればいいじゃないか、と。

井上 私も憲法審査会を傍聴していて、「国会議員の人たちが議論しないことには、国民の理解は深まらないのにな……」と感じています。

岸 たとえば、自民党が提起しているのは9条に追加して自衛隊を明記しよう、緊急事態条項を盛り込もう、教育問題に関して条文を改正しようといったポイントです。ただ、その点に強くこだわるわけではなく、他の党の皆さんと議論をしていきたい。憲法審査会での議論を通じて国民の皆さんにわかってもらって、3分の2の合意ができる改正案をまとめていき、国民投票にかけよう、と。それが私たちの立場なんですが、現状では入り口の部分で止まっています。

井上 はい。

岸 世論調査を見ても「議論すべきだ」という声が増えています。場合によっては、もう少し強い努力をしていく必要があると考えていますし、今国会でどこまで議論が進むか。そこに安倍政権のもとで憲法改正ができるかどうかも関わってくるでしょう。憲法改正はおそらく一国会だけではどうしようもない話ですので。

井上 これからも憲法審査会の傍聴を続けていきたいと思います。今日はありがとうございました。

(文/佐口賢作)

▽井上咲楽(いのうえ・さくら)
1999年10月2日生まれ、栃木県出身。A型。現在は『アッコにおまかせ』(TBS)などバラエティ番組を中心に活躍。
Twitter:@bling2sakura

▽岸信夫(きし・のぶお)
1959年4月1日生まれ、東京都出身。自由民主党所属の衆議院議員。住友商事を経て2004年の参議院選挙で初当選。2012年に衆議院議員に。外務副大臣などを歴任し、現在は衆議院議院運営委員会筆頭理事。
CREDIT

文/佐口賢作 撮影/松山勇樹


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