――エピソードも生まれそうです。
品川 僕は芸人もやっているので、例えば海外旅行に行っても面白いエピソードにできるんですよ。若い頃、自分のお金で初めて海外旅行に行ったとき、向こうでタクシーを拾ってぼられたってエピソードができたんです。でも、今は、(飛行機は)ビジネスに乗って、向こうについたら車で迎えに来てもらってガイドさんつけてもらって。
それもめちゃくちゃ楽しいんですけど、話せるエピソードができないんです。「これが面白かったんですよ~」ではなく、ただの自慢話にしかならない。エピソードって、ギリギリの状態の時がいちばん面白いですよね。2000円しか持ってないのにタクシーに乗って、料金が1800円くらいになったギリギリのときにこそ、何かが起きるんですよ。映画ってそれなんですよね。しんどいところまで追い詰められていくところが面白い。だから本作、6日間で映画を撮るというのはしんどかったです!
――なかなか、ハードスケジュールですね。
品川 毛穴という毛穴から涙が出ましたね(笑)。追い込められて苦しくて。それでも知らないうちに3年空いてて。3年ぶりに映画を撮れた喜びと、仲間たちがクラウドファンディングしてくれた喜びと、(出演者のまだ)無名の子たちの売れたいという気持ちと、(主演の)EMILYの歌と……。全部一つになり、割と映画の世界に引っ張られていて、クランクアップで泣きましたね。
――いろいろな感情がが混ざり合って…。
品川 (監督作品の)『漫才ギャング』でも舎弟の汚いアパートが出てきたりしますが、そういう人が落ちぶれて……とかっていう話を好んで撮るのは、人のしんどさを感じる作品が好きだからなのかもしれません。