インターネットが普及し、少子化が進み未婚率が上がっても「テレビを前に一家団欒」という家族をメインのターゲットとして、お茶の間で愛されるタレントを供給してきた日本のエンタメ産業。しかしメディアの多様化と先行き不透明な社会の中で、今後それが変わる可能性はあるだろうか。
「宗教や階級に基づく価値基準を持たなかった日本で、流行するエンタメの在り方を規定してきたのが『家庭に受け入れられること』です。しかし『サザエさん』の磯野家、『クレヨンしんちゃん』の野原家のような家族モデルはすでに過去のものとなり、“お茶の間”自体が現代日本では幻想です。メディアもYouTubeやSNSがあり、家族皆で同じコンテンツを鑑賞する時代はとうに過ぎ去りました。
しかし、家族の在り方を支えてきた経済的基盤やジェンダー規範がもはや自明ではなくなったのにもかかわらず、戦後に普及した標準的な家族像に代わるモデルを未だ見つけられずにいるのではないかと思います。今でも『一家団欒』のような家族像が理想として追い求められていますが、日本社会がその呪縛から脱した時に、大衆がスターに求める“未熟さ”の在り方も変わっていくのかもしれません。アーティストを目指す日本の才能ある若者が韓国のエンタメ産業に憧れて海を渡っているのも、そうした変化の表れとして考えてみる必要があるように思います」
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