その『10年桜』は10万枚を突破。続く『涙サプライズ!』では15万枚を超え、オリコンウィークリーで2位を獲得。世間のAKB48を見る目が変わってきた。同様にキング社内の空気も変わってきた。
湯浅 3位をいただいてから変わりました。当時キングにはそんなアーティストいませんでしたから。僕1人で始まったものが徐々に担当も増えていって、数年後には20人を抱える部署になりました。
2009年10月21日、AKB48は『RIVER』を発売した。当時、私が取材したメンバーはこの曲を「勝負曲」と表現した。選抜メンバーたちは本気で紅白を狙っていた。そういう意味だ。
湯浅 『RIVER』ですべてが変わりました。衣装も曲もカッコいい。だから、女性ファンが一気に増えたんです。結果、オリコンウィークリーチャートで1位をいただけましたし、この曲と『涙サプライズ!』を組み合わせた曲メドレーで紅白歌合戦に再出場もできました。
僕は、AKB48がキングからリリースすることになってから劇場に行って、メンバーに挨拶をしています。そこで話したのは、「オリコンウィークリー1位と紅白歌合戦を目指します」ということでした。こんなに早く実現できるとは思っていませんでしたけど、本当に嬉しかったです。
アイドルヲタクって名乗るのが少し恥ずかしかったりするじゃないですか。2000年代は今よりもっとその空気が強い時代でした。でも、僕はアイドルが好きなことに誇りを持ちたかった。アイドルって素敵じゃん、最高じゃんと思っているから。ショッピングモールで握手会をやりたかったのは、それが理由です。アイドルやヲタクの文化が、閉じられた世界ではなく、開かれた世界にしたかったんです。
AKB48の成長はあまりにも急だった。そのため、新宿ステーションスクエアやショッピングモールといった通りすがりでも立ち寄れる場所でのイベントは行えなくなった。人が集まり過ぎるのだ。
紅白歌合戦への返り咲き出場も果たした。『Beginner』ではミリオンを達成した。オリコン1位は当たり前に達成するようになった。テレビCMでも見ない日はないグループへと成長した。