FOLLOW US

UPDATE|2023/04/12

爆笑問題、バナナマン、おぎやはぎ…JUNKプロデューサーが語る「ラジオにしかできないこと」

TBSラジオ「JUNK」の統括プロデューサー宮嵜守史 撮影/西邑泰和



──極楽とんぼとの対談で、CMに入るタイミングに逡巡したエピソードが書かれていますが、「放送が始まったら舵取りをする」ディレクターにとって、CMに入るタイミングを決めることも重要な役割なのでしょうか。

宮嵜 『極楽とんぼの吠え魂』で、「このままだと時間がパンクして放送事故になってしまう」と、話のオチでもなんでもないところでCMに行ったんです。その後、おふたりに謝りつつ説明したら、加藤(浩次)さんが「CMなんか宮嵜が面白いと思ったタイミングでブチ込んでいいんだよ」と言ってくださって。その瞬間は気持ちがラクになったけど、そのあと「じゃあどんなタイミングでCMを入れたらいいんだ」と悩みました。

当時は、「芸人さんが盛り上がったところでCMに入ったら、自分がリスナーだったら『CM明けも聴こう』という気持ちになれるだろう」と、そのほうがいいと信じていたんです。いまは、どちらでもいいのかなって。JUNKでいうと、バナナマンや爆笑問題はちゃんと振ってからCMにいくことが多いと思うんです。パーソナリティーによって色が違うので、深夜にお笑い芸人がしゃべっている番組は、全部が全部、笑いでCMにいったほうがいいわけではありませんから。

──一般的にラジオはどのメディアよりも“ニン”が出ると言われています。キャスティングする際、パーソナリティーの“ニン”は考慮しますか?

宮嵜 そうですね。ハライチは、まずネタを見て「なんでこんなに面白いネタを考えられるんだろう」と興味を持って、話してみたら「ラジオ向きだな」と思ったんです。ただ、僕はそれほどキャスティングしていなくて。番組ができる保証もないところから動き始めたハライチは稀なケースで、おぎはやぎの場合は「極楽とんぼの空く枠があるけど、誰かいないか」と用意された場所がある状態で選ぶことができましたから。

──おぎやはぎやバナナマンの番組は、ラジオの定番であるエピソードトークがなくても成立しています。

宮嵜 否定しているように捉えてほしくないんですけど、エピソードトークをする番組だけが正解というわけじゃないと思っていて。

──著書のアルコ&ピースさんとの対談で「体験じゃなくて、何を思ったか」と書かれていました。

宮嵜 僕がリスナーとして聴いている理由は、「毎回毎回、すごいオチが待っているから」ではなくて、その人に興味があるから聴き続けているんです。誰にでも起こりうることが、その人のフィルターを通すと面白くなっている、という「人を聴いている」感覚なんです。「トイレが壊れていた」という同じ出来事でも、どこに目線をおくか、どこを膨らますかはパーソナリティーによって異なるので、その人が自分にとって興味を惹かれるフィルターを持っているのかどうか、だと思います。

──それが調味料の話でもいいと。

宮嵜 パーソナリティーには、「すべらない話をしなくていいです」と伝えています。面白いオチがあるエピソードがあれば、それはそれでいいんですけど、毎週そんなことが起きるはずはない。だから、毎週とってつけたようなオチを聴いていると、僕はリスナーとして「嘘っぽい」と思ってしまうんです。だったら、「この人に興味があるから」という理由で聴いたほうがいい。

強烈なエピソードトークじゃなくても、その人がどう感じて、どう行動に移したか、それが結果的に面白くなっていればいいんです。その「面白」も「爆笑」である必要はありません。ラジオは人間を味わうメディアだと思うので、矢作兼が、岩井勇気が、どんな人で、どんな考え方を持っているのか、そこに人柄が滲み出ていればいいんです。

▽『ラジオじゃないと届かない』
発売:ポプラ社
定価:1760円
https://onl.bz/gFGq7FX

【後編はこちら】伊集院光、爆笑問題、バナナマンら勢揃いの神番組の裏側をプロデューサーが語る

RECOMMENDED おすすめの記事