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UPDATE|2023/05/18

これまでの「シン」シリーズとは一線を画す『シン・仮面ライダー』に見る庵野秀明の“こだわりと本質”

『シン・仮面ライダー 音楽集』(キングレコード)


対して『シン・仮面ライダー』はその真逆をいく。ドキュメンタリーでも派手なアクションはマーベルなどの大資本が関わる海外映画に負けてしまう、という旨の発言を行っているシーンがあったが、アニメ畑出身であるからこそ、かえって人間らしい泥臭いアクションがみえる瞬間を執拗に追っているのだろう。

こうした「リアリティの追求」は『シン・仮面ライダー』以前からも行われてきた。2021年に公開された「エヴァ」シリーズ完結作である『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』は、アニメーション作品でありながら絵コンテをほとんどきらずに、モーションキャプチャーを使って完成状態のイメージ映像を作る手法が採られている。

机の上の発想では得られない、目の前の人間の演技をみた上で新しい映像表現を試行錯誤しているのだ。

実際に役者の肉体が動く「現場」と「カメラの近さ」こそ、庵野監督が現在志向している大きなテーマなのだろう。こうした近さを象徴する出来事として、『シン・仮面ライダー』でも監督本人の名前がモーションアクターとしてクレジットされている。

CGではなく実写のアクション、さらにスタントマンではなく俳優に、自身がモーションアクターとして実演する――まさにリアリティの究極に立ち向かわんとする熱狂ぶりが見てとれる。

庵野監督の『シン・仮面ライダー』は、「シン」シリーズでも随一の「庵野節」が効いたマニアック(=熱狂的)な実写映画だと言えるかもしれない。

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