地味で内向的な誠が「『私のことダサいとか思ってるんだろうな』って考えたら委縮しちゃうんだもん。急に仲良くなんて無理」と容姿端麗な結月と距離を置く理由を吐露したり、ひねくれた言動が目立つミカが「飛び切りの美人でもなければ、純粋で真っ直ぐにもなれない。私を一体誰が選ぶ?」と過去のトラウマから劣等感ばかりが強くなった自分自身を嫌悪したりなど、それらの声は胸に刺さるものばかり。
とりわけ、5話で美津未とミカが球技大会に向け、体育館で練習しているシーンは心の残る。
ミカが2年生の男子にぶつかれた後、その男子生徒の上履きに書かれている名前を記憶して、自分自身を理不尽に扱った人間の名前を記す“心の許さじノート”に刻もうと憎悪をたぎらせている一方、「あのふくださんって先輩はカッコ良かったよね。バシッと注意してくれて」と2人を助けてくれた先輩への感謝を口にする美津未。そんな美津未に対して、「きっとこういうところだ。私がムカつくやつの名前を2つ覚えている間に、岩倉さんは親切にしてくれた人の名前を1つ覚えるんだ」と引け目を感じる光景は印象的。
自分自身が嫌で嫌で仕方ないけど、それでも他人を恨まずにはいられない、そんな性格がハッキリと映し出され、ミカの人間らしさに触れることができた。
とはいえ、ただただモノローグが多いだけではなく、各登場人物の心境をサクッと提示せず、しっかりと早足にならずに描いている。そのため、学生時代のいい思い出も悪い想いでも、ついつい思い出してしまう心理描写が見事に表現されており、共感しっぱなし。
それでいて、それぞれの悩みを乗り越えて前に進む美津未達はとてもまぶしい。須田景凪が歌うオープニングテーマ『メロウ』の「眩しくて 眩しくて 僕は目を逸らしてしまう」という歌詞が自分自身の心境に当てはまり、急に恥ずかしさを覚えるほどにキラキラしている。
聡介や結月のモノローグは基本的には見られていないが、今後は見られることだろう。どのような悩みを抱え、どのように乗り越えていくのか、各登場人物の成長を楽しみに待ちたい。
【あわせて読む】『推し武道』映画化、主演・松村沙友理×原作・平尾アウリ対談「漫画を描いてきてよかった」