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UPDATE|2023/06/17

わずか2分で人生一転した西島秀俊ら、北野武監督に俳優人生を左右された名優たち

映画『首』公式サイトより (C)2023KADOKAWA(C)T.N GON Co.,Ltd.



続いては、北野監督映画の常連とも言うべき寺島進だ。

彼もまた北野監督との出会いが人生の転機となった一人で、監督デビュー作『その男、凶暴につき』のオーディションで役を射止めている。

以来、北野監督に惚れ込んだ寺島は、ハリウッドで映画を撮るというウワサを聞きつけた際、わざわざ渡米してアメリカを横断。北野と一緒に仕事したい一心で行動を起こし、その熱意に心動かされた北野監督は、映画『ソナチネ』で彼に大役を任せたそうだ。

過去にFILTの連載企画「愛ってなんだ。」で寺島は「もう性質の悪いストーカーだよな(笑)」と当時を振り返っているが、アメリカの件があったからこそ今の“俳優・寺島進”があるのだろう。

その後寺島は北野監督の映画に“ほぼレギュラー”と言ってもいい状態で出演しており、『首』でも名脇役として演技力を存分に発揮している。

俳優・津田寛治も映画『ソナチネ』出演者の1人であり、同作によって映画デビューを果たした人物だ。

役者としてまだ芽が出ない頃、バイトしていた喫茶店に北野監督が訪れ、津田が自身のプロフィールを渡したのが出会いのきっかけ。しかしそれから連絡がないまま1年が過ぎ、北野監督が再び店に足を運んだそうだ。

津田は北野監督が自分のことを覚えていただけでも感激したと語っているが、突如2人の間に喫茶店のママが押し入って津田を猛プッシュ。勢いに負けた北野監督はそのままエキストラとして津田を映画に出演させ、それ以降北野監督映画の常連になったという。

奇跡的とも言える形で始まった俳優のキャリアだったが、やはり人との繋がりがいかに映画にとって重要かが分かるエピソードだ。

こうして見ると通常のキャスティングとは大きく異なり、アクシデントとも言うべき出来事からその後の繋がりがスタートしていることが多い。意外な繋がりを大事にする感性は、北野監督本人も浅草フランス座時代に偶然、深見千三郎に師事するチャンスを得たからなのかもしれない。

北野監督はその影響力ゆえ、出演者たちの人生を大きく左右する存在だ。そして俳優たちは強い情熱で掴んだチャンスを持って、映画世界を深く愛しながら名演を見せる。まさに相思相愛の関係で北野監督映画は成り立っていると言ってもいいだろう。

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