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UPDATE|2023/08/06

東村アキコが初の文章エッセイに「まだ描いてないネタがあった、子ども時代の選りすぐり傑作選」

東村アキコ 撮影/松蔭浩之



「漫画は机に向き合う姿勢じゃないと描けないからすごく疲れるけど、文章はスマホだから寝っ転がって書けるんですよ(笑)。漫画と違って好きな姿勢で書ける、ということだけは楽でしたね。このアプリを開くと、どこでも幼少期の思い出に脳がバッと飛べるんです。私、自分の漫画っていろいろ反省点が出てきちゃうからなかなか読み返さないんですけど、『もしもし、アッコちゃん?』は何回も読み返しているんですよ。書きながらはもちろん、出来上がってからも何度も読んでいます。本当におもしろおかしい人生を送っているなと思いますね(笑)」

本書には、影響を受けた“漫画”にまつわる思い出と、物心ついたときからそばにあったという“電話”をテーマに、学生時代の爆笑エピソードがたっぷりと収録されている。

「父親と親戚が電電公社(現NTT)勤めで、漫画家になる前は自分も電話会社に就職していたから、ずっと電話とともに人生を歩んできた感覚があります。時代の変遷みたいなものも入れたかったんですけど、それにも電話がぴったりかなと。テレビにしちゃうと地域ごとに情報のズレが出ちゃうじゃないですか。当時、地元の宮崎には、チャンネルが2局しかなかったし(笑)。電話だったら『自宅の電話にも留守番電話あったよね』みたいな感じで、懐かしい情報共有ができるかなと思いました」

キャッチホンの登場など、固定電話あるあるといった懐かしい話題から、スマホで漫画を読めるようになった現在の話まで、思わずくすっと笑ってしまうエピソードばかりだ。

「私、本当に電話と漫画が合体するなんて思ってなかったんです。電話会社に勤めていたときがちょうど携帯電話のスタート期で、『売るぞ!movaキックオフ!』とかの張り紙を書かされて(笑)。そこからモンスターのように携帯が様変わりして、iモードとかトランスフォームする進化の過程も見てきて。まさか、自分の好きな漫画が携帯電話と合体するなんて、びっくりですよね。電話一家で育ってきて漫画家になったのはきっと私くらいしかいないから、その時代の生き証人として電話と漫画にまつわる話を書きたい、という思いもありました。漫画と電話。それが私の人生の大事な軸ですから。今回は、そのなかから子ども時代の選りすぐり傑作選を詰め込んだ1冊という感じです」

取材・文/吉田光枝

【後編はこちら】東村アキコが明かす時間術「仕事は1日8時間、ランチを削ってでもドラマを4時間見たい」

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