FOLLOW US

UPDATE|2023/08/19

“バラエティ界のカリスマ” マッコイ斉藤「遊びの中から生まれる企画のほうが当たる」

マッコイ斉藤 撮影/荻原大志



このように眉をひそめながら語るマッコイ斉藤氏だが、人付き合いが悪いわけでは決してない。むしろ実際はその逆で、どんなに過酷な編集作業に追われていたとしても、どうにしかして遊ぶ時間を捻出しようと躍起になっている印象すらある。そのバイタリティは常人離れしていると言っていい。

「40代半ばくらいまでは、ろくに寝なかったですからね。俺自身は酒が飲めないんだけど、朝の6時とか7時まで仲間と飲みの場で遊んでいました。で、そのまま仕事に行ったりもしていましたよ。夜の街で知り合うのはカッコいい人たちが多かったし、実際にそれが仕事に結びつくことも山ほどありました。会議室でパソコンを広げながら会議するより、遊びの中から生まれる企画のほうが当たるというのは断言できます。結果が出るのは圧倒的にそっちですよ。

コロナ以降、ZOOM会議とかも増えたじゃないですか。でも、そこからハッとするようなアイディアが生まれることって本当に少なくて……。たとえば車に乗っていると、『面白いオバサンが歩いているな』とか『今はこんなものが流行っているのか』とか気づくことがありますよね。そこが大事なんです。外観はすごく汚いのに、なぜかいつも行列している店がある。その発想で生まれたのが『きたなトラン』という企画。“買うシリーズ”は俺が札幌で演者さんに時計を買わされたところからはじまった」

こうしたマッコイ斉藤のアプローチを“身内笑い”と批判する業界人もいるそうだ。しかし当人は「身内も笑わせられないやつが、世間を笑わせられるはずない」とどこ吹く風。「学校でも笑いは基本的に遊び人が作る文化」というポリシーを持つだけに、「ろくに遊んでもいないようなガリ勉くんが作る番組は、目も当てられないほどつまらない」と容赦なくこき下ろす。

「企画の立て方やアイディアのまとめ方ということに関していうと、あまり詰め込みすぎないことも大切かな。幕の内弁当じゃなくて、カレーだったらカレー、ラーメンだったらラーメン一本に絞ったほうがいいんです。たとえば歌番組で視聴率を取ろうと焦って、『クイズ要素も入れよう』とか『ミュージシャンにメシも食わせよう』という発想は間違い。企画は1行で説明できるものじゃないとダメですよね。

今やっている『芦澤竜誠と行く ぶらり喧嘩旅』(ABEMA)なんてまさにそうでした。どこでもブチ切れるという芦澤選手の得がたい才能を活かすべく、ひたすら旅しながら喧嘩しているだけですから。『この野郎!』とか吠えている旅番組って観たことなかったから、新鮮で面白いかなと思ったんです」

現在はテレビだけでなく、YouTubeの世界でも才能を遺憾なく発揮するマッコイ斉藤氏。記事後編ではテレビ業界への危機感とバラエティの未来について、忖度一切なしの剥き出しトークを展開してくれた。

(取材・文/小野田衛)

▽マッコイ斉藤
伝説的お笑い番組『天才たけしの元気が出るテレビ』でディレクターデビュー。以降、
数々の人気深夜番組を手掛け“深夜のカリスマ”と呼ばれる。近年はとんねるずの石橋貴明と「貴ちゃんねるず」を立ち上げるなどYouTube でも活躍している。
CREDIT

取材・文/小野田衛 撮影/荻原大志


RECOMMENDED おすすめの記事