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UPDATE|2023/11/19

自己破産、胃がん…60歳目前の危機を乗り越えた元プロレスラー・田上明…それを支え続けた妻の独白

奥様は残念ながら写真NG。写真は、愛娘の菊乃さんと。奥様の経営する『ステーキ居酒屋チャンプ』(茨城県つくば市)にて。 撮影/丸山剛史


「松永さんのお店は単純に安くて美味しかったし、『いきなり!ステーキ』や『ビリー・ザ・キッド』といったチェーン店にはない魅力を感じていました。それでステーキに懸けてみようと考えたんです。駅からは遠いけど、地元の人が応援してくれる店を目指そうって。それに対する主人の意見ですか? 皆無ですよ。夫婦で話し合って決めたとかいう話じゃなくて、『こうしないとダメなんじゃないの?』って私が一方的に進めた感じ。とにかく何に対しても乗り気じゃない人だから、無理矢理やらないと動かないんですよね(笑)」

 ここまで黙って話を聞いていた田上が、「包丁の扱いに関しては、釣りで慣れていたからよ」とようやく重い口を開いた。

「とりあえず松永に調理の仕方を教わることになったんだよね。1回ではとても覚えられないって松永は言うんだけど、結局、1時間くらいで肉の捌き方をマスターしちゃった。筋を取ったり、油を取ったりしてさ。魚に比べたら、牛は楽勝だよ(笑)。でも本当に松永にはお世話になったよな」

 この言葉に呼応するように、「松永さんには感謝しかない」と夫人は大きくうなずいた。店をオープンするにあたっては、包丁などの調理器具から食器に至るまですべてを松永が手配してくれたという。店の看板もデザインから制作まで松永本人が手掛けてくれ、肉の仕入れも最初はわざわざ宅急便で送ってくれた。『ミスターデンジャー』という屋号も使用していいという話だったが、ちゃんこ屋時代から使用していた『チャンプ』があったため、さすがにこれは丁重にお断りしたそうだ。

「メニューも松永さんの意見を参考にさせていただきました。土地柄、値段は松永さんのお店より安く設定させていただいてますけどね。そのへんのことに関して、主人はまったくのノータッチ。それどころか、厨房にもなかなか立ってくれないですし……」

 ここでまた田上が不満そうに口を挟んできた。「いや、俺だって肉は焼けるよ。実際、女房が入院したときは焼いたしさ」とのことである。「ただ、普段はやらないんだ」と付け加えることも忘れない。

【後編に続く】自己破産後の田上明、妻の独白「何不自由なく生活できるって…全然そんなことないですよ」
AUTHOR

小野田 衛


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