「復帰するにあたって、というか、今年の私のテーマは『自立』なんですよ。
今までは本当に周りに甘えていたというか、集団で動いていたので、恵まれた環境にいたんですよね。
ほとんどドアtoドアで仕事の現場まで送ってもらえて、現場に行けば衣装もあるし、お弁当だってある。自分は動くだけでよかったんですよ。それってすごく贅沢なことじゃないですか?
それに常にメンバーが周りにいてくれた。メンバーは分かってくれているじゃないですか、私のことを。こうやって取材を受けるときも『はるっぴはこういうの苦手だよね』って、他のメンバーがどんどん前に出てしゃべってくれたりもした。
そうやって頼ってばかりじゃダメだな、と思ってはいたんですけど、いつのまにかメンバーの優しさに甘えている自分がいたんですよ。
でも、これからは全部、自分1人でやっていかなくちゃいけない。だから『自立』しなくちゃいけないんですよ、私は。
もちろんマネージャーさんやスタッフのみなさんに支えていただいて、初めてお仕事ができるんですけど、少しずつ『自分のお世話は自分でする』ことを意識しながら活動しているんですよ。
たとえば、ちょっとした移動は1人で電車に乗ったりもしてますよ。今まで、そんなことをしたことがなかったので、自分で乗り換え方を調べて、自動改札をピッ! って通るのは、それだけですごく新鮮です。うふふふ!」
15歳でこの世界に飛び込み、いきなり第一線で活躍することになったので、彼女には「普通の生活」という経験値が欠けている部分がある。
これから女優として、いろいろな役を演じていく上で、それはマイナスになってしまう。復帰する前に「普通の生活」を体感できていることは、非常に大きなことだ。
ここでハッと気がついた。
インタビューをしている部屋の壁にかけられた時計と、兒玉遥の息遣いがしっかりとリンクしている。
冒頭で「一度、止まっていた時計の針がやっと動きはじめた」と書いたが、それはここで撤回しなくてはいけない。
彼女の時計の針は、一度も止まっていない。
ただ、本当に忙しかった時期は秒針がものすごいスピードで回転していたり、すべての針がめちゃくちゃに動いているように感じることもあった。
それが今、世の中の流れと同じテンポで時を刻みはじめ、彼女もそのテンポで歩いている。そう考えると、2年近いブランクも、単なる空白時間ではなく、とても重要な意味を持ってくるような気がしてきた。