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UPDATE|2023/12/21

初週興収1位・ディズニー100周年記念作品『ウィッシュ』、女性像の描き方の変化に注目

(C) 2023 Disney. All Rights Reserved.



『アナと雪の女王』では「レント」のモリーン役として知られるイディナ・メンゼル、『ミラベルと魔法だらけの家』(2021)では「イン・ザ・ハイツ」などのラテン系ミュージカルで活躍するステファニー・ベアトリスを起用するなど、ミュージカルの実力者を積極的に起用することで、アニメという枠を飛び越えて、ひとつのミュージカル映画としてのクオリティをかなり高めている。

もちろん日本語キャストも魅力的ではあるし、生田絵梨花や福山雅治も役にはまっている。さらに松たか子や上戸彩といった、過去のディズニー作品で声優を務めたタレントたちが勢ぞろいした豪華シーンもあったりと見所はそれなりにあるものの、あくまで本場ブロードウェイ仕込みの圧倒的歌唱力を体感したい場合は、やはり字幕版をおすすめしたい。

また近年のディズニーアニメ映画における女性像の変化にも注目してもらいたい。実は『アナと雪の女王』以降のディズニーアニメ映画は、いわゆる”王子様”的な立ち位置のキャラクターがほとんど存在しておらず、あくまで独立した女性が主人公とされていることが多い。

『シンデレラ』や『白雪姫』といったおとぎ話を多く映画化してきたディズニー。「ディズニー・プンセス」といったブランドも確立してきたわけだが、そのなかで「女性は男性に支えられるべき」というステレオタイプな女性像を発信し続けてきた。

しかし時代は変化し、そういった考え自体が時代にそぐわないとして、皮肉的に扱われることも多くなり、ディズニー自信も『魔法にかけられて』(2007)などで、自虐的に扱ってきたりもしたわけだが、ディズニーは常に女性像を模索している傾向が強い。ところがその一方で、あと一歩が踏み出せない位置いることもわかる。

特に同性愛に関しては保守的な部分がまだある。『アナと雪の女王』でエルサが能力を解放するシーンは、レズビアンもしくはバイセクシャルであることへのカミングアウトのメタファーとされ、SNSではエルサにガールフレンドを登場させて欲しいという意見が飛び交い、大きな話題となったが、結局のところ『アナと雪の女王2』(2019)には、そういったキャラクターは登場しなかった。

同じディズニーであってもピクサーの場合は、短編作品『殻を破る』(2020)や『バズ・ライトイヤー』(2022)などで同性愛を扱ってきているし、実写の場合も『美女と野獣』(2017)のルフゥは同性愛者という設定から、国によっては上映を禁止されていたりもする。

同作のように国自体が宗教によって成り立っている場合、宗教的に同性愛を認めていない場合は、NGが出て上映できないとう問題が発生する。つまり世界中のより多くの人に届けたいと思うからこそ、かなり慎重にはなっているのだろう。

そういった背景を考えると、実写やピクサーはある程度の冒険があったとしても、ホームであるアニメ映画ではまだ先になるのではないだろうか。

しかし、ディズニーなりの方法で自分たちの作ってきてしまった固定概念を崩そうと模索し、様々なコンセプトの作品を今後も作り続けてくれることは間違いないだろう。

【ストーリー】
物語の舞台は、どんな願いも叶うという魔法の王国ロサス。この国で暮らす少女アーシャは、ある出来事をきっかけに王国に隠された恐ろしい真実を知ってしまう。彼女が立ち向かうのは、ディズニー史上最も恐ろしいヴィラン(悪役)であるマグニフィコ王。様々な試練を乗り越えた彼女が王国にもたらす“奇跡”とは?

【クレジット】
公開日:2023年12月15日(金)
監督:クリス・バック、ファウン・ヴィーラスンソーン
脚本:ジェニファー・リー
音楽:ジュリア・マイケルズ
製作:ピーター・デル・ヴェッコ、フアン・パブロ・レイジェス
〈声優キャスト〉
出演:アリアナ・デボーズ、アラン・テュディック、クリス・パインほか
〈日本版声優キャスト〉
出演:生田絵梨花、福山雅治、山寺宏一ほか
原題:WISH
全米公開:2023年11月22日
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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