山本直樹原作の短編コミックを実写映画化した『ファンシー』。永瀬正敏演じる彫師の郵便配達員と窪田正孝演じる詩人、そして1人の女性のねじれた三角関係から巻き起こるエロスと暴力を描いた注目作品だ。本作でヒロインを演じるのが小西桜子。これが映画初出演とは思えないほど自然な演技で、2人の間で揺れる少女を伸びやかに表現しており、大胆なベッドシーンにも挑戦している。
小西は、本作のヒロインをオーディションで勝ち取った。本作以降も三池崇監督のカンヌ国際映画祭出品作『初恋』、日本映画スプラッシュ部門出品作品『猿楽町で会いましょう』(児山隆監督)と次々と注目映画に出演する小西が女優を目指した理由とは。
* * *
──原作者の山本直樹さんのことはご存知でしたか?
小西 知ってはいたんですけど読んだことはなくて、オーディションの前に原作の『ファンシー』を読ませて頂きました。全体的に低めの温度感で今まで読んだことのない作品だったんですけど、すごく面白かったです。絵柄の雰囲気や出てくる女の子も魅力的で、タイプのマンガでしたね。原作は短編ですけど、台本は新しい要素が増えて違う世界観になっている印象でした。
──小西さんの演じる“月夜の星”は、若い詩人(窪田正孝)と文通を交わすファンという役柄ですが、どこか捉えどころのないキャラクターです。かなり役作りは難しかったのではないでしょうか。
小西 恥ずかしながら、ほぼ演技自体が初めてだったんです。廣田正興監督も細かく役柄を説明されるタイプではなかったので、きっちりと役作りをしないままクランクインを迎えて、現場の雰囲気に委ねながら演じていました。今がリハーサルなのか本番なのかも分からない状態でしたからね。
──それまで演技経験はなかったんですか?
小西 一度だけ自主映画に出させてもらったことがあって、そこからお芝居をやりたいなと思ってオーディションを受け始めたんですけど、それから1、2か月で『ファンシー』の出演が決まったんです。今考えると大変なことなんですけど、当時は芸能界のことが分からな過ぎて、あまり状況を理解していなかったんですよね。クランクイン後も現実感がなくて、けっこう記憶が飛んでいます(笑)。
──しかも芸能事務所に所属せず、フリーで活動しているんですよね。
小西 芸能事務所には一度も所属したことがないです。