――撮影現場でお互いを見て、どんなタイプの監督だと感じますか?
岩淵 宮地君は感情の沸点をとらえるのが上手です。『らいか ろりん すとん』ではチッチさんが感情を前に出す方だったので、そのタイミングを上手く掴んでいました。
宮地 問題なのは自分も感情的になっていることですけどね(笑)。それでも岩淵さんと山下さんの影響で年々コントロールはできるようになっているんですけど。岩淵さんは全体の構成が見えていて、インタビューのタイミングを逃さない。相手の気持ちを考えると、聞きにくい局面もあるので、なかなかできることじゃないんです。山下さんもそうですが、お二人は映画に必要なことを常に考えてらっしゃいますね。
――どのように今回の編集作業を進めたのでしょうか。
岩淵 最初は分業で、前半は僕、後半は宮地君が編集して繋ぎました。その時点では脱落者のインタビューがふんだんにあったので、それを軸に構成していって、メインとなる二人の物語に繋げていたんです。それを渡辺さんに見せたところ、映画としては二人の物語にまとめたほうが見やすいんじゃないかというご意見をいただいて、僕の作ったパートはほぼ消して、宮地君の作った後半のラインに合わせて改めて繋いでいきました。
――候補生との距離感はどのように意識していますか?
岩淵 去年、女性のカメラマンがいたんですけど、候補生に感情移入して、カメラを回せなくなっちゃったんです。「どうして渡辺さんは、こんな酷いことをするんですか?」ってなっちゃって。それぐらい感情を引っ張られる現場ですけど、カメラマンとしては同情とか分かった気になるのはご法度なんです。
宮地 そうなっちゃうと本当にカメラを回せなくなっちゃいますからね。僕も前は心を動かされていたんですけど、だんだん落ち着いて女の子の涙に慣れていきました。
岩淵 宮地君は対象に寄るよね。候補生のインタビューなんて超ドアップだったもん。
宮地 自然とカメラに自分の感情が出ちゃってるんですね(笑)。
岩淵 宮地君は、その子の表情を撮りたいって映像の欲望に忠実だけど、ちゃんと聞くべきことは聞いているからね。先ほど話した女性のカメラマンは候補生と友達みたいな関係になっちゃっていたから。
宮地 友達になるのは良くないですね。
岩淵 目の前で苦労している候補生を見て、自分事のように錯覚するのはおかしいと思うんです。走っているわけでも、踊っているわけでもないのに、その子の気持ちになれるわけがないんですから。冷静に、映像で表現するのが僕らの仕事なので、そこは勘違いするなよと。
宮地 僕も間近で岩淵さんと山下さんを見てきたから、徐々にそういうスタンスになっていきましたけど、なかなかできないことですよ。