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UPDATE|2023/02/18

「選挙戦は無料で楽しめるフェスでありプロレス」時事芸人・プチ鹿島に聞いた政治のエモさ

プチ鹿島 撮影/松山勇樹



──一方では選挙はフェスだともおっしゃっています。『劇場版 センキョナンデス』の中で、タイムテーブルというか、各候補者たちの街頭演説の時間を調べてスケジュールを組んで、ハシゴして回るところは、音楽フェスの趣がありました。

鹿島 政治家が10人いれば10人の主張があって、自分の代理は誰がいいかなって選ぶのが選挙ですよね。「わたしを国会に行かせてください。なぜならばこういうことがやりたいからです」って言うために、政治家っていうのは人前に出てくるんです。人前に出ないほうがおかしい。それこそ旧統一教会とかの固定票、組織票があって自分は安泰だから、人前に出ないっていうのっておかしいじゃないですか。人前にふらっと出てくるのが選挙であって、それはどんなに有名な政治家でもなんです。演説を見れば「この人、テレビで見たことあったけど、実際に会うとこんな人なんだな」っていうのは、すごくわかるし、しかも無料で見れるんですよ。だから僕はフェスって言ってます。AKB48じゃないですけど、会いに行けるし、しかもCDも買わなくていい(笑)。

──映画の中で「エモい」とも発言されていましたが、政治のエモさとは、どういったところでしょうか。

鹿島 政治家にとっては選挙って命がけです。落ちればただの人だし、党の存亡だってかかってる。どんなに偉いと言われている政治家だって、例えば衆議院が解散されれば首になってリセットされる。だから選挙では全力になる。いい大人の喜怒哀楽、泣いたり、笑ったり、叫んで声をからしたりって、普段見れないところが見れるって、そういう意味でエモいですよ。

──プロレスっぽい興奮、フェスとしての高揚感、エモさ…、なんでもいいからまずは、面白がるところから始めたとしても、最終的には投票ってところに辿りつくと思うのですが、そこでまた「誰に入れればいいのか」という壁にぶち当たります。

鹿島 僕も最初はそう思ってたんです。「立候補している連中の中で、マシなやついないじゃないか」って。でもそれって、自分が潔癖すぎるというか、完璧すぎるものを求めすぎてたんです。20年以上、全国津々浦々の選挙の現場を取材してきた畠山理仁さんって方がおっしゃっていたんだけど、「この人はすごい」っていう候補はなかなかいないと。だから比較的この中で、自分がマシだと思う人を選べばいい。その人がマシだったかどうかは、次の選挙で答えがでるわけじゃないですか。

最初からゴリゴリの支持政党がある人もいると思うけど、基本的には僕は無党派です。例えば2023年のいま、選挙があったとして、比較的マシな人に投票する。それから何年後かに、自分の判断は正しかったのかって振り返って「正しかった」と思ったらそれはそれでいいし、「やっぱり違ってたな」って思っても、「2023年の自分が何を考えていたんだろう」って確認することが出来る。自分の日記帳代わりですよね。

──マシな人に投票すればいい、という考え方は目から鱗でした。だけど選挙に参加するならしっかり考えなくてはならない、だからこそ、面倒くさいってイメージだったので。

鹿島 僕らは、誰が通るかわからない選挙区の人たちの選挙権のことをプラチナチケットって呼んでるんですけど、「もしかしたら、自分はプラチナチケットを持ってるかもしれない」って考えたほうがワクワク感があるし、投票権があるってことは、誰でも参加していいですよって言われてるってことです。だったら行かない手はない。選挙権があるのって18歳以上じゃないですか。だから大人の遊びなんです。自分と対話をして「今回はこの人に」って投票すれば、それは極上の大人の遊びになると思いますね。

取材・文/大泉りか

▽プチ鹿島
時事芸人。新聞14紙を読み比べ、スポーツ、文化、政治と幅広いジャンルからニュースを読み解く。2019年に「ニュース時事能力検定」1級に合格。2021年より「朝日新聞デジタル」コメントプラスのコメンテーターを務める。コラム連載は月間17本で「読売中高生新聞」など10代向けも多数。レギュラー番組に、TBS-R 「東京ポッド許可局」 YBSーR 「キックス」など。昨年12月には「ヤラセと情熱 水曜スペシャル『川口浩探検隊』の真実」(双葉社)を上梓。

『劇場版 センキョナンデス』
「選挙は最高のお祭りだ!」のはずが・・・野次馬のつもりだったラッパーと芸人が、安倍元首相銃撃事件の日の選挙戦を記録。

監督・出演:ダースレイダー(ラッパー) × プチ鹿島(時事芸人)
大島新(『なぜ君は総理大臣になれないのか』監督)プロデュース最新作!
https://www.senkyonandesu.com/

【後編はこちら】選挙戦ロードムービーが公開、時事芸人・プチ鹿島「政治家の人間としての器が見られる、野次馬の記録」

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