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UPDATE|2023/02/18

時事芸人 プチ鹿島「人が土壇場でどういう振る舞いをするか。選挙は人間の器を見られる絶好の機会」

プチ鹿島 撮影/松山勇樹



──特に印象深かった候補者の方とかっていらっしゃいますか?

鹿島 菅さんには密着したわけですけども、面白かったのは、朝一回目の演説では、あんまりシャッキリしてなくて。でも、駅前を練り歩きをする中、だんだんと人出が多くなってきて、有権者たちと触れ合って、お昼過ぎに辻元清美さんと合流した後に、京橋の駅前で三回目の演説をしたら、めちゃくちゃパキパキしてて。政治家って、やっぱり人前に出るとどんどん変わるんだなって。アイドルと同じです。

──数多くの候補者たちを取り上げることで、それぞれの個性が浮き彫りになると。

鹿島 そう。例えば、同じ立憲の候補者でも、まだキャリアの浅い人はチラシの配り方や演説がふわっとしてるんですよね。辻元さんは、僕たちの質問にはちゃんと答えてくれつつ、向こう側に有権者が通ると、すぐに走ってチラシを渡しにいったり。やっぱり回を重ねて当選している人はすごいなって。これってたぶん他の仕事でも同じだと思うんです。例えば営業マンでも、出来る人って普段の所作が違うじゃないですか。そういう政治家のプロとしての技の見比べが『劇場版 センキョナンデス』に映っています。

──たしかに、その人の政策うんぬんは知らなくても、「この人、信頼できそう」とか「ちょっと感じ悪いな」とか、そういう振る舞いが可視化されていると思いました。

鹿島 それでいえば、維新の吉村(洋文)さんを初めてちゃんとナマで見たんですが、意外と「演説が上手い!」って感じじゃないんです。ラグビーか何かの黒いポロシャツを着て、ちょっとアマチュア感があるというか、一生懸命になにかをやろうとしている大学生みたいな雰囲気で、「維新もいろいろスキャンダルあるじゃないですか。けれど自分たちは変えていきたいんです」みたいなことを言っている。ナマで見ると「大阪くらいは、自民ではなく維新で」っていう気持ちになるのもわかるなって、伝わってきましたね。あとは演説聞きに来ている人たちの層が他の候補者とは違う。明らかに若い。

──自民党の候補者の松川るいさんも、強烈に印象に残りました。

鹿島 松川さんに会ったのは、月曜の朝10時だったんですよ。そんな時間、あんまり人がいないですよね。それでもひとりふたり寄ってくる人を相手に演説するのが政治家なんですが、僕らを見つけるやいなや、ぐいぐいと近寄ってきて「今日は何をしに来たんですか?」みたいな。だから「僕らは選挙の全候補者に会いたいと思って東京から来たんです」って言ったら、これまたぐいぐいしゃべりだして。この人は自分の言葉を持ってる人だなって思ったんです。同じことは共産党の辰巳孝太郎さんにも感じて。自民党と共産党は、イデオロギーとか言っていることは真逆なんだけど。この選挙区では、松川さんや辰巳さんは、誰が来てもちゃんと自分の言葉で迎え撃つ人なんだなって感じましたね。

──鹿島さんのそのフラットさが、『劇場版 センキョナンデス』にも出ているというか、特定のイデオロギーに寄らず、ひらすらに候補者たちの姿を映すことで、その人となりを浮き彫りにしたドキュメンタリーになっていると思いました。

鹿島 それぞれの候補者たちの器や人としての振る舞いを見ることで、自然と「この人はどんな政策があるのか」とか「〇〇派とは、何を中心に訴えているのか」とか自然に政策や思想にシフトしていくと思うんです。だから最初は人間に興味を持つだけで充分だと思います。『劇場版 センキョナンデス』は、覗き見、野次馬の記録だけど、でも大事なものが映っているのかもしれないって思うんですよね。

──それでいえば、参院選の投票日前々日の7月8日、安倍元首相銃撃事件当日の、それぞれの候補者たちの反応は、なかなか来るものがありましたし。

鹿島 あの日は、お昼にニュースが飛び込んできて、衝撃だしショックだし、今日一日、どうなるんだろうって思いました。でも、僕らは24時間カメラを回し続けて記録しようって。候補者たちも、「今日は選挙活動を辞めておこう」って人もいたし、「今日だからやるんだ」って人もいた。あの日の判断だからしょうがないけど、やっぱりこれは民主主義の危機だなって思ったんです。だって僕らが見に行った選挙が取り上げられちゃったわけだし、これから先、厳重な警備がつくようになって、候補者たちに質問も出来なくなるんだったら、僕らの民主主義を取り上げられるってことじゃないですか。そういう意味では、僕らの喜怒哀楽も恐れも不安も晒してる、剥き出しのドキュメンタリーにもなっちゃったんです。野次馬気分でいいので、ぜひ劇場に足を運んで、目撃してください。

取材・文/大泉りか

▽プチ鹿島
時事芸人。新聞14紙を読み比べ、スポーツ、文化、政治と幅広いジャンルからニュースを読み解く。2019年に「ニュース時事能力検定」1級に合格。2021年より「朝日新聞デジタル」コメントプラスのコメンテーターを務める。コラム連載は月間17本で「読売中高生新聞」など10代向けも多数。レギュラー番組に、TBS-R 「東京ポッド許可局」 YBSーR 「キックス」など。昨年12月には「ヤラセと情熱 水曜スペシャル『川口浩探検隊』の真実」(双葉社)を上梓。

『劇場版 センキョナンデス』
「選挙は最高のお祭りだ!」のはずが・・・野次馬のつもりだったラッパーと芸人が、安倍元首相銃撃事件の日の選挙戦を記録。

監督・出演:ダースレイダー(ラッパー) × プチ鹿島(時事芸人)
大島新(『なぜ君は総理大臣になれないのか』監督)プロデュース最新作!
https://www.senkyonandesu.com/

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