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UPDATE|2023/03/09

オスカー最有力、コインランドリーの中年女性が世界を救う何でもありのマルチバースSF『エブエブ』

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3月13日に発表が迫る第95回アカデミー賞。最有力候補といわれているのが、ミシェル・ヨー主演映画、3月3日より劇場公開されている『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』だ。今年の主演女優賞は『TAR/ター』のケイト・ブランシェットとミシェル・ヨーの一騎打ちともいわれており、助演男優賞や脚本賞など10部門11ノミネートと最多ノミネートを果たした。

【写真】『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』場面写真

『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022)や『アントマン&ワスプ:クアントマニア』(2023)、『リバーデイル』、『リックアンドモーティ』など、マルチバース(多元宇宙)というワードが映画やドラマ、アニメ、コミックにおいて、より身近になってきた昨今。本作も別の宇宙、分岐した未来の自分自身とリンクしながら敵と闘うというコミックのような設定の作品だ。

しかし少し変わっているのはその設定。主人公エヴリンはコインランドリーを経営する中国系移民で夫とも娘とも関係があまり上手くいってない、税務処理にも苦戦している中年女性だということ。

そんな彼女がある日突然、何の前触れもなく、滅亡の危機から世界を救うことになるのだから、ストーリー構成としては違和感を感じるかもしれない。しかしマルチバースという何でもありの設定をゴリ押しし、開き直ることで自分たちの世界観に観客を引きずり込む、巧妙な脚本が全面に活きている。

見る人によっては、「めちゃくちゃな話書くな!」と言われそうな脚本かもしれないが、それを映画化してしまったダイエル・クワンとダニエル・シャイナートによる「ダニエルズ」というコンビ監督はただものではない!!

次々に飛び出す奇想天外で予想もつかない展開の数々。『スイス・アーミーマン』(2016)ではダイエル・ラドクリフにオナラが原動力の死体を演じさせたのだから、もともと常識の通用しないダニエルズが、マルチバースを扱ったとなれば、全てが自由。ダニエルズにはうってつけの題材というべきだろう。


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