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UPDATE|2019/06/23

井上咲楽が野田佳彦 元首相に聞く「もう1度総理大臣になりたいと思いますか?」

左から野田佳彦、井上咲楽 撮影/松山勇樹



井上 すぐに政治の世界へ入ったんですか?

野田 2年後の千葉県議会議員選挙に出ました。それまでは家庭教師やプロパンガスの店でガス漏れの検診をしながら食いつなぐ生活。今で言うフリーターですね。月10万円を稼ぐのは、えらい大変なことなんだなと思いながらやっていました。

井上 とりあえず就職、という道は考えなかったんですか?

野田 会社に入ると政治活動をする時間が日曜日くらいしか取れなくなっちゃいますから。僕は誰かから地盤を引き継いだわけでも、著名人であるという看板があったわけでもありません。ゼロから政治家になるには、とにかく街頭に立つことだと思って、毎朝6時から9時まで駅前で街頭演説をしていました。選挙期間でもないのに毎日駅前で街頭演説する人は、千葉県では僕が第1号だったと思います。

井上 その頃、13時間連続で演説したこともあったという記事を読んだんですが……。

野田 やりましたね。朝7時から夜8時まで。「おはようございます」と送り出した通勤通学の人たちを「おかえりなさい」と出迎える。「本当に続けていたのか!」と驚かれました。

井上 それはどんな効果を狙っていたんですか?

野田 とにかく自分を知ってもらわなければ選挙に出ても、票になりません。それで、毎朝街頭演説をしていましたが、選挙が近づくと他の候補も街頭に立つわけです。地盤がある人、看板がある人もいます。29歳の新人は埋没します。そこで、公民館で集会をやってみました。

井上 演説会ですね。

野田 電話作戦、ポスティング。あらゆる手段で呼びかけ、座布団をいっぱい敷いて準備万端で開始時間を迎えたら、来てくださったのは1人だけ。弁士1人、聴衆1人。緊張感がすごかったですよ。来てくれた人もね、自分が帰ったら悪いなと思うから立つに立てない(笑)。

井上 確かに(笑)。

野田 そんなことがあったので、「まだ箱モノをやるのは早い。アウトドアで勝負だ」と。で、巻き紙を作り、「今日は13時間街頭やります」、「5時間経過」、「ただいま野田はトイレに行っております」、「残り2時間」と、イベント化してみたんです。そうしたら朝は皆さん急いでいますから「やっているな」くらいの反応だったんですが、夕方以降は足を止めてくれる人が増え、最終的に500人くらいの聴衆が集まりました。

井上 500人!

野田 公民館では1対1が自分の限界だったのに、体力の限りを尽くして一生懸命やったらアウトドアで500人のタウンミーティングができた。あれが僕の政治家としての原点ですね。

井上 いや、すごく響きました! 私もいろんなタレントさんがいるなかで、人と同じことをやっているだけじゃダメだってよく言われるので。

野田 何にも持っていないとね、人間、必死で考えますよね。苦し紛れのアイデアでもコツコツが大事なんですよ。コツコツやってみて、飛躍するときは言葉は悪いかもしれないけど、ある種の狂気が必要。

井上 野田さんは当時おいくつだったんですか?

野田 29歳。千葉県議会議員に初当選しました。

CREDIT

取材・文/佐口賢作 撮影/松山勇樹


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