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UPDATE|2023/04/23

『だが、情熱はある』に見る、実在する人物を演じることの難しさと高橋&森本の覚悟

『だが、情熱はある』(日本テレビ)公式サイトより



若林より一つ年上の山里はその頃、「面白い人がタイプ」だという好きな女子に振り向いてもらうため、面白くなろうと奮闘していた。相手が彼氏とデートをしている喫茶店に乗り込み、過去話で笑いを取った。お笑い芸人を目指す気持ちが大きくなり、「俺は自分のことを面白いと思っているんです!」と両親に必死で訴えた。

芸人を主人公にした作品はそこまで珍しいものではない。Netflixでドラマ化、さらには映画化・舞台化までされた又吉直樹の小説『火花』や、同じくNetflixで映画化された『浅草キッド』などがある。今も実在する人物を他の人が演じる実録として、本作は『浅草キッド』に近い部分があるだろう。本作はオープニングで「友情物語でもサクセスストーリーでもない」という注釈が入り、誰かに生き方を指南するようなものでもないらしいが──。

1話からライブ会場のセットや衣装、若林と山里それぞれの著書やラジオで語られたエピソードが盛り込まれ、彼らのストーリーが見事に描かれていた。実在する人物を演じるにあたり放送前には期待と不安が入り混じる声があがっていたが、第1話放送後は視聴者から「若林、山ちゃん、まんまじゃん!」「最初は無理があると思ったけど、完全に憑依している」など驚きの声が多数あがった。高橋・森本だけではなく、春日を演じる戸塚も「めっちゃ春日だった」と好評だ。

オープニングの漫才の挨拶から、2人はもう若林と山里だった。見た目はもちろん違うのだが、話し方、振る舞い、しぐさ……まるで画面に若林・山里をみているようだった。本人と連絡をとりながら役づくりをしているという高橋・森本の意気込みと覚悟がひしひしと伝わってくる。

第1話で2人の演技を観た時に、『浅草キッド』の柳楽優弥をふと思い出した。普段のアイドルオーラを消して挑む高橋と森本。モデルとなる2人をよく研究しているのが伝わってくる演技に、柳楽を観た時と同じ気持ちになったのだ。

『浅草キッド』の柳楽もまた、北野武という今も実在する人物を演じた。モノマネだなんて決して言えない、憑依しているようにもみえるほどだった。


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