FOLLOW US

UPDATE|2023/06/25

なぜ騙される!?被害者急増の国際ロマンス詐欺を取材する記者に聞いた“引っかかる人”の特徴

水谷竹秀 撮影/松山勇樹



「これが国際ロマンス詐欺の特徴で、同じ日本人が相手だと、ちょっとありえないと思うんですよ。やっぱり外国人だからこういう熱烈なアプローチなのかな? と納得しているところもあるし、舞い上がってしまう。被害者も倣って同じような愛情表現で返していくうちに、酔ってきてしまうんです」

まさに恋は盲目という状態だ。

「犯人は信じ込ませるために、ボイスメッセージを送ってくることもあるし、ビデオチャットをしたりもするんです。プロフィール画像と同じルックスの男性が、スクリーンに出てきて、口を動かしてしゃべっていて、英語の声が流れるんですけど、見れば一発で口としゃべりがまったく合ってないことがわかるんです。

英語がわからなくてもおかしいと思うレベル。だけど被害者は、違和感を感じなかったって言うんですよね。ある程度、相手のことを信じちゃうと、どこか不信感を持ったとしても、イメージを崩したくない、信じたい、あの人がそういうことをするなんて思いたくないっていう思いに囚われちゃう。『あんなにわたしのことを思ってくれてるんだから、変なことをする人じゃない』って」

国際ロマンス詐欺の被害者は日本人ばかりでなく、オーストラリア人やイギリス人など、いわゆるネイティブの英語圏にも存在する。ナイジェリアやガーナといった西アフリカの犯人たちがしゃべる、なまりの混じった英語を疑うことなく、相手を欧米人の美男美女だと信じ込んでしまうのもこの心理だろう。

「日本の被害者の場合、彼らの送ってくるメッセージの日本語が多少おかしくても、翻訳ソフトがちゃんと訳せてないんだなって納得してしまうんですよね。それにそもそも、日本人って欧米人に対してあまり強く出られないというか、みなさん、多かれ少なかれ、コンプレックスを持っていることも要因だと思います」

心の奥底にコンプレックスがあるからこそ、相手が自分に積極的にアプローチを掛けてくれることへの喜びが増す上、暗号資産という聞きなれない資産形成の手法も、グローバルな相手からの提案だからこそ、あっさりと信じ込んでしまう。

「会ったことのない人に、金銭を預けないこと。騙されないためには、これに尽きると思うんです。うまい話のわけがないので。でも、そういう当たり前のことさえ崩れてしまうほど、国際ロマンス詐欺の手口は巧妙なのです」

いまや常識となったSNSでの出会い。しかし見誤れば奈落への入口ともならない。もしもあなたが今やりとりしている相手に、少しでも「おかしい」という意和感を感じたすぐに、勇気ある撤退をしたほうがいいかもしれない。

取材・文/大泉りか


『ルポ 国際ロマンス詐欺』(小学館新書)
著/水谷竹秀
定価1100円(税込)
絶賛発売中!

RECOMMENDED おすすめの記事