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UPDATE|2024/02/06

『不適切にもほどがある!』が突きつけた、“働き方改革”という建前と現場で働く人の本音

『不適切にもほどがある!』公式HPより



第1話では、令和的価値観と昭和的価値観の中間的なポジションにいる秋津睦実(磯村勇斗)に、「だから話し合いましょう、今日は話し合いましょう」とミュージカル的演出で歌わせて、真の多様性は何なのだろうと問いかけた。そして今回の第2話でも、現場で奮闘する渚の本音がミュージカル風に語られる。

ひとつ:仕事は一人でやらせて欲しい、ふたつ:シンプルに給料をあげて欲しい、みっつ:託児所は別館ではなく本館に設置して欲しい、よっつ:ペーパーレス化は急がないで欲しい、いつつ:ランチは最低一時間保証して欲しい(以下省略)。働き方改革という建前だけを信奉する会社と、実際に働く人間たちの偽らざる想いのギャップが、鮮やかに示される。

人間は、正論だけでは生きていけない。正論は正論であるが故に、知らず知らずに人を追い込んでしまう。渚が夫に向かって叫ぶ「あんたAIなんすか、夫GPTなんすか?」という言葉は、それだけに切実に迫ってくる。コンプライアンスとは何なのかを、改めて突きつけてくる。

おそらく宮藤官九郎の意図は、昭和的価値観を称揚することではない。昭和おじさん・市郎というキャラクターを中心に据えることで、令和の常識を改めて相対化させ、本当に我々にとっての幸福とは何なのか、その思考を促すことにある。

『不適切にもほどがある!』は、破格の風刺性と実験性に富んだ、とんでもない作品なのではないか。放送されているのはまだ2エピソードだけだが、早くも筆者は2024年最重要ドラマであることを確信しております。

【あわせて読む】『不適切にもほどがある!』永遠の中坊男子クドカンが問いかける多様性
AUTHOR

竹島 ルイ


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