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UPDATE|2020/08/23

賛否両論を呼び続ける青木真也が語る格闘家論「表に出るということは叩かれる覚悟を持つということ」

撮影/松山勇樹


──ところで今、格闘技界では国内最大手のRIZINが揺れています。青木選手はRIZINに直接関係ないものの、どう見ているんですか?

青木 揺れているというのは、クラウドファンディングとかについてですよね? 最高じゃないですか。久しぶりに胸が躍る出来事だなって興奮しています。だってリターンの中身を見ました? 本当にショボい内容ばかり。「純粋応援プラン」とかあるけど、それってただお金をもらってるだけじゃないですか。あれはやってはいけないことですよ。美しくないから。同じ業界にいる者として恥ずかしい話だし、怒りすら感じますね。あれをやるんだったら、その前に俺たちみたいな芸事をする人間は有力者に手を貸してもらうべきです。

──パトロンということですか?

青木 タニマチです。大昔からそうじゃないですか。文豪や音楽家もそうですけど、有力者がいて、その人たちが才能に投資するというのが本来のかたちですよ。あの仕上がり最悪なクラファンまでしてRIZINを残す必要なんてないと思う。彼らは言うでしょう、「日本の格闘技を残すためなんだ」って。でも、それだって僕に言わせれば大間違いで、「日本の格闘技=RIZIN」なんかじゃない。というか、団体ではない。彼らが必死でお金を集めているのは、自分たちの都合でしかないです。

──日本人選手が海外で活躍すれば、日本の格闘技は死なないということですか?

青木 もちろんそうです。それに加えて、もし本当に日本独自の格闘技団体が必要だとしたら、榊原(信行)さんたちが倒れても誰かが立ち上がるでしょう。それなのに今は無理矢理に延命しているようにしか僕からは見えない。僕らが肝に銘じなくちゃいけないのは、格闘技やプロレスだけが辛いわけじゃないんです。今は飲食だって旅行だってアパレルだって大変なわけじゃないですか。

──コロナ禍の中、青木選手自身は格闘技でもプロレスでも無観客試合を経験しました。配信で課金するとしても、興行として成立すると思いますか?

青木 結論からいうと、無理ですね。それは実際にやってみて痛感した。大会というのは人と一緒になって作るものですからね。ましてや観客がいないと成立しない。

──観客にアピールすることが主眼のプロレスは理解できるんですけど、競技である格闘技も無理ですか?

青木 非常に難しいですね。ライブコンテンツというのはお客さんと一緒に作るものだから。「無観客でもまったく変わらない」という選手がいたら、それは単なるスポーツ選手です。純粋なる競技者。むしろ観客がいないほうがやりやすいでしょう。だけど僕たちは表現者だから。必ず人前に立たないとダメ。客の反応を見ながら試合を作っていくわけですから。そこは基本的にプロレスも格闘技も変わらないですよ。

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