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UPDATE|2023/09/19

『VIVANT』破格のスケールで作られたドラマが最後に辿り着いた、家族の愛

『VIVANT』予告(公式YouTubeより)



個人的には、バルカ警察のチンギス(Barslkhagva Batbold)を始め、警察官のほとんどが孤児院出身という設定が胸アツ。ワニズを外務大臣の座から引き摺り下ろそうと、バルカの高官たちと交渉まで行なっていたのだから、その行動力はハンパない。はじめは乃木や野崎たちを地の果てまで追いかけるだけの悪役で、バルカ脱出後は出番がないだろうと思っていたら、ここまで深くドラマに関与するキャラクターだったとは。逆に、前半はあれだけ大活躍を見せていたドラム(富栄ドラム)が、後半になるとただニコニコしているだけなのはちょっと残念だった。

そしてクライマックス。ベキたちが公安の手を逃れ、自分を裏切った元公安外事課課長の上原(橋爪功)の自宅に押し入るという展開。それこそ『相棒』のように、1話丸ごとかけてサスペンスを盛り上げることができる状況にも関わらず、乃木があっという間に現場に駆けつけ、ものの数分で事態を収拾してしまう。やや消化不良の感は拭えないが、おそらく制作サイドが、手に汗握るサスペンスを見せることよりも、父と子の愛を見せることを選択したゆえなのだろう。

ラストで乃木は、SNS界隈では別班説も囁かれていたが本当にただの医療従事者だった薫(二階堂ふみ)とジャミーンと再会し、熱い抱擁を交わす。破格のスケールで作られたドラマ『VIVANT』が最後に辿り着いたのは、家族の愛。これこそが、“日本で最も視聴率を獲得できるドラマ監督”福澤克雄の、必然的ラストだったのだ。

SNSでは、乃木が語った「皇天親無く惟徳を是輔く」というセリフが「天は公平で贔屓せず、徳のある人を助ける」という意味から、実はベキたちは生きているという考察で溢れ返り、早くも続編を期待する声が殺到している。このスケールのドラマを、しかもこれだけ主演級の役者を揃えて制作するのは至難の技だとは思うが、筆者もいつか訪れるかもしれないPART2を期待して待ちたい。

【あわせて読む】『VIVANT』潜入捜査官モノとしての面白さに満ちた第8話
AUTHOR

竹島 ルイ


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